7 仙術のソバマンジュウむかしむかし、すばらしく美人で、その娘があやしいほどきれいな女で、そして旅篭経営しておった。泊まり客がいっけんども、ほの泊まり客出たな見たことないんだど。ふしぎなこともあるもんだ。して、ほこにはほの、馬五、六頭つねにつながっておったど。 「おかしいこともあるもんだぁ」 と思って、ある人がほこさ泊り行って、様子を見っだら、夜中になったら、ほの馬で内庭を馬鍬で代掻きする。 「ほう、水もないどこ代掻きなの始めだった。あと何故すんなだべか」 と思って見っだら、そいっちゃソバなの蒔き始めた。したら一晩のうちに、ソバ芽出して、花咲いで、実ぇなった。はいつ挽き臼でひいで、ソバマンジュウ作った。そしてそのソバマンジュウ、朝げ出す。お客さま、ほれ、ソバマンジュウなていうな、昔は珍らしがったもんだから、 「こりゃ結構だ」 なて食うんだら、アハハハ、アハハハて、おがしくなって、笑ったのがこんど、苦しくなたがと思うど頭の耳あたりから馬になて来んなだど。 そして馬にさっで、みな売り飛ばさっでだ。 「ははぁ、こういうことか、よし」 ていうわけで、その人が他さ行って、ソバマンジュウ買ってきて、ほっからもらったような、いかにも素振りして食べて、 「実は、わたしも、他からソバマンジュウもらってきた。お宅んなよりうまいかうまくないか、食ってみねが」 ていうわけで、その旅篭のおかみさ食せてみたど。ほうしたらたちまち旅篭のおかみもはぁ、アハハハ、アハハハて笑ってたのが、こんど苦しくなったと思ったらば、馬になった。それさタテゴはめではぁ、ちゃんとその人が乗馬に使ってだ。いや、言うこときいて、とてもええ馬だて。そしてあるとき野原まで行ったら、スウーッと空から仙人が来て、そこさ立ったけぁ、その馬ば見っだけぁ、そして馬、その仙人ば見たけぁ、涙ぽろぽろこぼしたって。 どういうことだべと思ったら、 「あれほど、おれが仙術を、悪い方に使うなって、お前さ教えたはずだ。それをおれのいましめを破って、単なるお金もうけに使うなて、もっての他だ。今回だけは元のまにもどしてやるげんども、後は絶対にはぁ、もどしてやらないぞ」 て、こういう風に言わっだって。ほして、元の、ほれ、娘にもどったって。そしてそれから、ほの馬さのってきたお客さまと結婚したていう話もあるし、そっからまずはぁ、煙のごとく消えで行ったていう話もあっし、そのさきは何だかわかんね。 どんぴんからりん、すっからりん。 |
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