1 短筒(たんづつ)強盗と若者

 むかしむかし、田舎から江戸さ行って一生けんめい働いっだ若衆いだったって。ところが、根がとっても真面目なもんだし、旦那がら大変重く用いらっではぁ、「掛け」とりまでさせられるようになった。
 たまたまその頃、江戸には、短筒強盗ていうの居で、ほして、あの、今のピストルだな、ピストルつきつけて、掛けとりして来た金ねらうな、居だった。たまたま、その若者が掛けとりして、いっぱい金持て来たところが、向うから短筒つきつけらっで、
「これ、若い者待て、あり金、全部よこせ。よこさねど、この三連発が火を吹くぞ」
 びっくりした。ほん時、ほれ、すばらしく機転の効くほの番頭なもんだから、
「金はみな上げます。んだげんども、おれも田舎から出てきて、番頭にまでなったんだから、只渡したんだら、旦那さ申し訳ない。その短筒、三連発て、いま()ったんだげんども、三連発で、この前掛けさ、孔あけてもらいたい」
「よし、んだら、今打って孔あける」
 ボンと打った、一発。ボンと打った、二発。またボンと打った三発。
「あと、ないのがはぁ」
「うん、三連発だから、あとない」
「このヤロウ!」
 ていうど、いきなり今度ぁ、番頭の方が荒くなって、三発打ってしまったがら、空ぇなったわけだ。
 ほうして格闘したら、田舎から出て来たから、力は強いべし、強盗ねじふせらっだって。ほしてとうとう、ほの短筒強盗がお縄になったって。
 どんぴんからりん、すっからりん。
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