48 猿とびっきの寄合田

 むかしあったけど。
 びっきと猿いでやったど。そして猿は、
「蛙ぁ、おれと二人で寄合田作んねが」
 て、こう言うたど。したば、「ええ」て二人で作って、畔塗りに行ったど。畔は 塗ったども、次、田うなう段になったど。そして蛙は、
「猿殿、猿殿、今日は田うないに行くぜ」
 て寄ったど。
「いや、今日はとても頭いたくて行かんね」
 て、こう言う。仕方ないから、蛙は一人で行って、その田うなって来たずも。 そしてその次の代掻きして田植になったど。
「猿殿、猿殿、今日は田植だから、行くぜ」
 て呼んだら、
「今日はとても腹やめて行かんね」
 て、こう言うど。
「ほんでは仕方ないから、おれ一人で植えて来んぜ」
 て、そう言うて、蛙は植えてきたど。そしてこんど、田の草取りになったど。
「猿殿、猿殿、田の草とりに行くぜ」
「いやいや、今日は疝気めて、とっても行かんね」
「いや、ほんでは仕方ない。疝気ではえっから大事に寝てろ」
 て、今日は田の草も一人で取ったど。そして秋になったど。
「猿殿、猿殿、稲刈りに行くぜ」
 て呼んだど。
「いやいや、今日は何だか、とても気持わるくて行かんね」
 て言うど、
「ほんでは、おれ刈って来っから」
 て、そして蛙は稲も自分で刈って来たど。そして、
「それを粉にして餅搗いて食うべ」
 て、こう言うたど。そしたば、
「今日はおれもはまる...。今日は元気だ」
 て、二人してそれを粉にして餅搗いたど。そしたら、猿言うことには、
「ただ蛙、この餅食っては面白くないから、裏の金比羅山まで背負い上げて、こ の臼、って..(転がして)みないか。そして下で、早く来たものは、拾って食うことにしねえか」
 て、そう言うたど。蛙も仕方ないんだから、「オイ」て登ったど。
「よし、おれ背負って行ぐから」
 て、背負い上げだど。そして金比羅山からゴロンゴロンと、まぐったど。猿は 早く下まで来て、待ち構えっだど。その餅拾うべと思って。そしたば、蛙は後か らピタンピタンと来たば、臼に餅喰付いでだら、ええ..がったべに、喰付かないで、途中の柴やなんかさ、みな餅喰付いではぁ、途中にあったど。それ蛙が拾い集め てはぁ、いっぱい持って来たど。そして来てみたば、臼が下まで来て、ストンと かぶさって、蓋さってあったずも。そして、
「早く、蛙、開けて呉ろ、早く蛙開けてろ」
 て言うずも。そんではぁ、脇さ餅置いではぁ、臼まくして....、猿ば出して っだど。そしたば、猿はさっぱり餅もんねで、臼の中さ入っていだでぁ。蛙はこん ど餅千切って食う。猿はけなり...(うらやましい)くてはぁ、
「そっちの方食うんだ、そら下がるぞ」
 なて言うずも。そしてしまいに、
「おれにも、ちいと...呉んねえか」
 て、こう言うずも、
「ほだども、先に拾った者食うごとにしたなだもの」
 て、こう言うずも。
「そんなことやねで、おれにもちいと...、呉れちゃ」
 て、こう言うたど。そうすっど、蛙は今までのことあって、あまり面白くないもんだから、中の方の熱いとこ取って、頬っぺたさピタンとぶっつけでっだど。
「ああ、あちちち…」
 猿、むしり取って食べたど。
「いま、ちいと...呉ろちゃ」
 こんどまた、熱いとこ、中から別な頬っぺたさペタンとぶっつけたど。
「ああ、あちち…」
 むしりとって食べて、猿ぁ、それから顔赤くなったのであったど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
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