47 天狗とボタモチ

 博奕しったどこさ、天狗来て、
「おれどこを、一つはめで呉ろ」
 て言うて、天狗もそれさはまって博奕して、里人を負かした。負けた里の人は 逃げてきて、
「何が一番嫌(や)んだ?」
 て、天狗に聞かれっど。
「おれは、何嫌(や)んだって、ボタモチぐらい嫌(や) んだものない」
 て、そう言うて、天狗さ、
「お前の嫌いなものは、何(なえ)だ」
 て聞いたら、
「おれは何嫌いたって、バラの木ほど嫌いな木、ない」
 て言うもんだから、里の人は家の廻りさ、バラの木切って来て、立てたじだ。
 そうすっど、天狗はボタモチ持って来たども、バラ植えてあって入らんね。た だ高い窓開けて置いだて。そうすっど天狗はあんまり近くさ寄らんねもんだから 外にいて、家の中さ、ボタモチを雨あられと投げ込んだごんだど。
「いやいや、熱い、いたい。切ない、切ない」
 て、家の中で、その里の人は音立てて、そのボタモチ拾って食ったど。
 むかしとーびん。
(高橋きみの)
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