42 狐と狸とかわうそむかしあったけど。むかし、小国さ村の衆買いものに行くことになったど。おらえのおっかちゃに 隣のおっかちゃに、そのまた隣のおっかちゃに買いものに行ったど。正月の。そ してこんどいっぱい塩魚だの塩だの、砂糖だの、いっぱい買って来なんなねもん だから、年寄衆、みな買って来たど。子どもたちが迎えに行ったど。 「おかちゃん、ひどかったべや、こんどおらだ代って背負うから降ろせ」 て、その荷物てんでに背負って呉(く)っだど。そしてこんど、 「おかちゃだ、くたびっだべから、ゆっくり来い。おらだ行ってっから…」 て、そう言うて、その子どもたち、さっさと消えてしまったと。そして家さ来 てみて、 「みちこ、どこさ置いだ」 「何や、おかちゃ、おれそんなこと、荷物なて知しゃねぜ」 て、こう言うたど。 「なんだや、あそこまで迎えに来たでないか、橋のところまで」 「迎えなて行かねぜ」 「隣のかずえも来たし、裏の千恵子も来たでないか」 て、そう言うたど。 「んでは、狐に騙さっではぁ、せっかく買って来たもの、みな取らっだなであっ たなぁ」 て、人たちはそういう風に話したど。そしてその取った狐だちは山さ行って、 分けっこしたど。そうすっどこんど、狐は悪かしこいもんだから、分けかけたの 親方になったど。そして、 「かわうそ、かわうそ、お前は年中魚食ってるども、塩気ないど、うまくないべ から、お前は塩の方ええ..でないか」 て、そういうて塩呉っだど。狸は、 「お前はめったに、おれのような足も早くないもんだから、穴の中に余計いるべ から、お前はローソクにしたらええ..でないか」 て、ローソク呉っだど。そしてあと、自分がええ..ものはぁ、皆とってしまった ど。そうして、かわうそは喜んで、もらった塩、魚につけて食うべと思って川に もぐったど。そしたらみんな溶けてしまって、はぁ魚見つけるまでになくなって しまったど。こんど狸は穴さ行って、 「今夜こそ明るくして寝んべ」 て思って火点けたど。そしたら自分の毛さまで点いて、火傷 してしまったど。狐ばっかりええことしたど。それほど狐ざぁ、悪がしこいもんだど。 むかしとーびん。 |
(川崎みさを) |
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