40 古屋の漏りむかしあったけど。じんつぁとばんちゃ、いであったど。貧乏な家で屋根もろくに葺(ふ)かんねがった ど。そしてある夜、二人で炉端で当っていたど。んだども、ええ馬コ生まれてあっ たど。(一才馬のことをトネッコという)。そして飼って大事に育てっだど。それ、 こんど馬喰は、 「あそこのトネッコ、行って売れて言うども売んねがら、盗んで呉れんべ」 て、こう思って、待ち構えていたど。そしてこんど狼は、 「あれ、何とかして、このじんつぁとばんちゃ、食って呉(く)っだいもんだ」 て、そう思って軒場さ来ていたど。そしたら、じんつぁとばんちゃと話には、 「なんて、世の中に恐っかないと言うたて、古屋の漏ると、米櫃の空(から)ほど恐っか ないものないな」 て、二人はこう言うたど。 「はて、狼も恐っかなくない、古屋の漏るなんていうもの、米櫃の空なんていう ものは、どんな恐っかないもんだべ」 て思って、そう思っていたど。 「こんな恐っかないとこには居らんね」 て思って飛び出したど。そうすっど馬喰、トネッコ飛び出したと思って、狼さ 縄かけて、結(ゆ)つないでしまったど。とうとう狼は馬喰にとらっでしまったど。 むかしとーびん。 |
(川崎みさを) |
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