36 屁たれ嫁コむかしあったけど。ある家で、お嫁さんもらったど。そしてもらいがけは丈夫で一生懸命で稼ぐ嫁 さんであったど。そして、日経つにしたがって、何だか顔青ぶくれになって、こ わそう(疲れたよう)になってきたずも。 「そがえに、顔面(つら)わるくなって、どこさ切ないことないか」 て聞いたど。そしたば、 「どこも別に病気ないども、唯一つ我慢しったことある」 て言わっだもな。 「何、そがえに我慢しった」 て言うたば、 「本当はそれみたいな屁たれだ」 て言うたど。 「ええから、そんがえな屁は誰も出るもんだから、堪(こら)えていないで、たれろ」 て言うたど。そしたば、 「ほんだら、みんな家内中、炉縁(ふち)さ喰っついて呉(く)ろ」 て、そう言うたずも。こんどみんな家内中、炉縁さ喰付いていたば、いや、垂(た) っだ。大きな大きな、ブウーと台風でもあっか、大屁たれっど、炉縁さ喰っ付いっ だ人もはぁ、みんなよろめいて、半戸開けっだれば、外方(とかた) の梨の木は、みないっぱいしだれっだ.....梨、みな落ちてしまったど。そうしたば、嫁の顔も段々にはれた のも、しびて来て、元の顔色になって、そして治って、丈夫になって働いたけが ら、あんまり屁は堪えているもんでないけど。とーびん。 |
(高橋しのぶ) |
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