(6)プウプウとズスズスとエーカンナ

 むかしあったど。
 ここのような山の中にお寺あって、三人の小僧と和尚さまいたけど。そうして こんど、一人の小僧は餅大好きで、餅好きだから、プウプウと名付けっだじし、 それからいま一人の名は、甘酒好きだから、ズスズスと名付けたじし、それから いま一人の名は酒好きだから、エーカンナと名付けたど。
 そしてこんど、たまには飲ませっずも、まず和尚さま一人で飲んだり食ったり することあるだとも、今のような寒いような晩げだざぁ、
「今夜はあんまり寒いから、みんなの好きな御馳走すっから、おれ、餅あぶった ら餅好きな呼ぶし、呼ぶまでてんでに自分の好きなことを、自分の部屋行ってし てろ」
 て、和尚さま言うたど。そう言うて騙して、騙したばりではぁ、自分、餅食た いものだから、一ワタシ焙ぶって呼ばんねで、熱くなったから上げっど、プウプ ウて言うてしまったずもな。プウプウて吹いで。「ハイ」て言うけざぁ、小僧起き てきて、自分ばり食べることなくてはぁ、一ワタシみんな小僧の御馳走にしたけ ど。
 それから、餅は小僧に聞きつけらっで、皆食っでしまったし、こんど、
「甘酒でも燗して飲むかなぁ」
 て、甘酒お燗して、そしてこんどあまり熱いなしたか何だか、「ズスズス」て言 うたずも。そうすっど、また「ハイ」て起きて来たな、甘酒好きな「ズスズス」 て言う小僧であったど。その次に、
「さぁ、よく燗して、酒でも飲んで、いっぱい元気で、寝る他ない。酒お燗しま しょう」
 て、お燗して飲んでいたけぁ、「ああ、ええ燗だ」ってそう言うて飲んだずも。 そうすっど、それを聞きつけて、「ハイ」てまた起きてきたずも。そうしてはぁ、 そのええ..燗したの、酒はみな小僧の御馳走にしてしまって、和尚さまはその晩げ 飲みも食いも出ね。小僧の御馳走になったけど。
 むかしとーびん。
(高橋しのぶ)
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