21 なら梨とりむかしあったけど。太郎と次郎と三郎という兄弟あったど。母親が病気で寝てて「梨食いたい」て言うたて、孝行な子どもで、山さ梨とり に行くことにしたど。 「途中さ年寄がいるから、その年寄に聞いて、行ってええ..と言われたら行げ、行 くなと言わっだら行くな」 て言わっで行ったど。行く途中で年寄のじさまに行き会ったんだど。そして道 を聞いたところ、じさま、 「行くと、道になんぼか太い藤づる這(は)ってるから、その藤づるをダンと踏んで、 切れたら行ってええ..し、切れねとき行くな」 て言うたどな。行ったら藤づるあったので、踏んだら、それ切れねがったど。 んだども、あがえ食いたいがるもの、一つでもええから食せたいと思って、かま わず行ったど。 こんど行くと、大きな牛寝てっから、どんと踏んで起きたら、行けばええ..し、 起きないときは行くなと言わっで、それも起きないで動かないのに行った。 そして今度、一番しまいに大きな滝あっから、その滝の音、気ィ付けて聞いて ると、行ってもさしつかえないときは、 「行けざんざん、行けざんざんと落ちるし、行って悪いときは、戻れざんざん、 戻れざんざんというから、その滝のときはもどれ」 食せたいまんまで、聞かねで行ったずなだな。そして梨の木さ登って、もぎ始 まって、何か一つ目(まなぐ)光らせた化物、暗くなって出たて言うなだな。それから、 「上から食うべか、下から食うべか」 て出はって来たど。そして段々に登って来て、化物に引ずり落さっで食(か)っだな だな。それからこんど、次郎が行って、年寄に会って聞かされて行って、最初は 藤づるは切れなかったし、牛は起きなかったども、それ聞かねで滝さ行ったら、 行くなというのを、それも聞かねで行って、同じに食わっだど。 三郎は年寄に行会って、藤づるは切れたし、牛も起きたし、滝も「行けざんざ ん」て言うし、喜んで行って梨の木さ登って梨をもいだ。化物は引ずり落ろす気 になって、足さ、化物が手を掛けっど、その化物の手をもいでしまった。そして まくり...落ちたどこさ降りて行って、格闘して、 「許さんね、おれたち兄弟、みな食った」 て言うたらば、 「生命だけ助けて呉ろ、太郎も次郎も死なねで腹の中さいたから」 て、そう言うたどな。そして腹さいて見たら、二人とも元気で出てきた。そし て、梨、三人で背負って母親に食せて、母親の病気治って元気になったって。 むかしとーびん。 |
(高橋しのぶ) |
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