17 親孝行むかしあったけど。立派な若衆いたけど。んだども母親は何(な)してか、殿さまさ無理に上げらっでし まって、そして今度父親と二人で暮しったけど。そして何とかして母親ば、つれ もどしたいもんだとも、殿さまの意向なんてつよいもんで、とてもおらだの力で つれもどすことはできないし、困ったもんだと思って泣き往生してはぁ、父親と 暮しったけど。 そしてあるとき、こんど、何でも灰で縄なって出せば、何でも思うことかなわ せるって、そういう書き出し貼ったずも、街道さ。 「んでは、どうしてなったらええ..もんなんだか」 何んとかして、母親ば助けたいは、いっぱいだども、まず工夫して、そしてこ んど母親ばつれもどしたい一心で、さまざま考えてみたずもな。それからこんど なるだけ藁、よっく打(ぶ)って、そしてこんど、丈夫な縄なって、ここで焼いたけど。 そしたば、そくっ...とそのままの縄なってなぁ灰で、それをそっくりこわさないよ うにして、殿さまさもって行ったば、 「よく賢い息子もった、このくらい一心に考えて、孝行さっだごではぁ、無理に母親ば押(おさ) えて置くわけに行かねから、帰すから…」 て、帰されだども、腰も曲るようになってから、ようよう返してもらって、親 孝行したけど、とーびん。 |
(高橋しのぶ) |
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