14 兄弟話

 むかしあったけど。
 あるどこに大勢の子ども持ったじんつぁとばんつぁいでやったど。子ども大勢 のために、働いても働いても身上はよくなんねがったど。そしてはぁ、とうとう はぁ、子ども大きくなったども、何にも与えらんねで死ぬようになったずも。そ ん時、父親、子ども皆集めて、
「お前だには、何にも残して呉れっことでないようなもんであったども、おれぁ、 金甕、裏の畠さ埋めておいたから、どこだなんて教えねども、お前だで一生懸命 で、畠、隅から隅まで掘ってみろ、そうすれば、出はっから」
 て、こう言うて死んだど。そうすっど兄弟ではぁ、一生懸命で、毎日、
「三尺も深く掘んなねぞ」
 て教えたど。そして一生懸命で掘って行くども、なかなか出ないずもの。その 金甕。そうすっじど一人の兄弟、
「おらはそんなことやめた」
 て、別な仕事についてしまったど。そのうちにまたその別な兄弟、
「明日(あした)も掘っても出ないし、今日も出なかったし」
 一人やめ二人やめして、とうとう辛棒つよいのが、一人になったど。そして隅 から隅まで掘って、掘った土も唯置かんねから、耕したわけだど。そしたら野菜 でも何でもよく出来るど。そして終る頃になったとき、その息子は気付いたど。
「父親の言うたのは、金甕でなく、土を深く掘れば掘るほど、作る物がよく出来 ると、こういう教えであったな」
 て、気ィ付いて、それから一生懸命で百姓に精出したために、大金持の長者に なってあったけど。んだから人間で真面目に一生懸命に働くもんだど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
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