9 魚 女 房

 むかしあったけど。
 男、一人暮ししったどこさ女が来て、「休ませてくろ」て言わっで、休んでいる うちに、「泊めて呉ろ」と言わっで、こんど「貰って呉ろ」て言わっだ。そして貰っ たど。
 毎日毎日、ハラ子汁して食わせるというのだな。男は、ハラ子なても買ってお かねし、魚屋も遠(とか)いに、なじょして求めて来て食せるもんだべど、
「用達しに行くべ、弁当拵えて呉(く)ろ」
 て弁当拵わせて、そっと梁の上さあがって見たど。晩方になって、御飯(おまま)炊きの 時に、味噌すってお汁鍋さ入れて、そこさ股がっているずも。
「変なことするもんだ、汚ないことするもんだ」
 て見て、山に行った振りして来て、御飯出したの、お汁食たくないと食わなかっ たど。それで、
「拵うどこ見らっでは、これまでだから…」
 て、大きな鮭になって、流しさ入って行ったど。
 むかしとーびん。
(高橋しのぶ)
>>お杉お玉 目次へ