5 山鳥女房

 むかしあったけど。
 ある百姓、山道、夕方通りかかったば、一羽の山鳥(きじ)、罠(わな) にかかって苦しんでいたとこさ 通りかかって、それ助けて家さ帰ったけど。そしたば、次の日、ええ女 尋ねてきて、
「おれ行くどこ持たねから、かか..にして居て呉んねが」
 て言うて、そこの家にいるようになったけど。そして、
「おれ、何も仕事もないから、機でも織るから、おれ、ほだども、機織ってるう ち、機織部屋さ来ないでくんねぇか」
 そう頼んで、そして織って出来あがった機持って来て、そしてこんど、この親 父に売らせて、儲けらせてあったど。そして、
「また織るから…」
 て言うども、
「こんな、きれいなな、どんな真似して織るもんだか」
 て思って、そっと窓の切れから、親父が見たって。そしたば羽根もろく..になく なった山鳥(きじ) 、一生懸命で機織りしてであったど。そしたば、山鳥が見らっだこと 分って、んだから、その機、一反織り上げっどはぁ、
「おれが、この前助けらっだ山鳥であった。恩返しに来たんで、あったども、見 らっではいらんねから、これで帰らせてもらう」  て帰って行ったけど。
 んだから、鳥でも恩返しということ知ってるもんだど。
 むかしとーびん。
(川崎みさを)
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