1 桃太郎むかしあったけど。じさとばさいたけど。そして子どもなくて何とかして、毎日子ども欲しいとは 思っていたども、なかなか生れないで、一生懸命で稼いで、じんつぁは山さ柴刈 りに、ばさは川さ洗濯に行ったけど。 そして、ばさ、コチャコチャと洗っていたらば、赤い箱と黒い箱と流っで来た ずも。 「赤い箱こっちゃこい、黒い箱そっちゃ行げ」 て、一生懸命でそう言うて洗っていたど。そしたば、段々に赤い箱寄って来た から、拾ってきて、こんなきれいな箱、まず持ってきて、じんつぁ上って来たら 見せんべと思ってもってきて、流しの棚さ上げっだけど。そしてこんど、 「こんなめんごい箱のきれいな拾って来た、じんつぁ、今、流しの棚さ上げっだ」 て、二人で見たば、中さ桃入っていたずもな。 「こんなええ..桃二人で食ってしまうも、もったいないから、まず上げておけ」 て寝たずも。二人で。そして夜中になったば何だか赤子の泣き声すっずもな。 ホガェホガェて。それからこんど蓋とってみたど。二人で起きて、そしたば、き れいな男子(おとここ)、桃二つに割れて生れっだずも。 「ほう、これはええ..がったもんだ。おらださ授 さず いたんだべ。桃から出たから、桃 太郎と名付 つ けんべ」 て、そう言うて、二人で相談して、桃太郎と名付けたずも。そうしてこんどはぁ 賢こい子で、ずんずんおがって....、うまいもの食せらっではぁ、おがって、若衆、 十五、六才にもなったかな。 「じんつぁとばんちゃ、おれの願いごと聞いて呉んねえか」 て、そう言うずも。 「何でもお前の言うことだら、聞 き っから、何だ」 て、言うたば、 「他でないども、おれにキミダンゴ作って呉んねえか、おれ、鬼ガ島さ行ってみ たいから、鬼ガ島さ鬼退治に行って来っから…」 「お前のような年の若いの、退治なのでないんだから、まっともよう...まで我慢し ろ」て言うども、 「どうでも作ってもらいたい」 て言うもんだから、キミダンゴ作って呉 く っだずも。そしてそれ腰さ袋さ入 い っで 下げて、ずっと行ったど。そして行ったば、犬きたんだな。 「桃太郎さん、桃太郎さん、どさ行ぐ」て言う。 「おれ、鬼ガ島さ鬼退治に行くべと思って出かけて来た」 て言うたば、 「その腰に下げた袋は何だ」 そしたば、 「日本一のキミダンゴじゅうもんで、一つ食えばうまいもの、二つ食えば苦 にが いも の、三つ食えば辛いものだから、あまりいっぱい食ねで、一つ食って止めねねぇ もんだ」 て言うたど。 「一つでええ..から呉っでくろ」 て言うた。そして一つ呉っで食せたど。そしたばうまいもんだて喜んで食って、 「おればも家来にして伴させてくろ」て。 「あんまりええ..から歩 あ えべ」 そしてずっと行ったば、こんど、猿来たずもな。猿は、 「どこさ行ぐ」 て、また、 「桃太郎さん、桃太郎さん、どこさ行ぐ」 「鬼ガ島さ、鬼退治に行く」 て、出かけて来たば、猿も一緒に伴して来て呉っだど。そして、 「腰さ下げっだものは何だ」 て、聞かっだ。 「日本一のキミダンゴて、うまいもんだども、一つ食えばうまいもの、二つ食え ば苦いもの、三つ食えば辛いものだから、一つより余計は食んねもんだ」て。 「一つでええ..から呉ろ、おれも一緒に行んから」 て、また一つもらって食ってずっと行くど、こんどキジ飛んで来たどな。 「桃太郎さん、桃太郎さん、どこさ行ぐ」 て、また聞かっで、その通りに言うたど。そしてそれも一つもらって食ってはぁ、 三人が、犬と猿とキジと伴して、鬼ガ島さ行ったど。そして来てみたば、鬼ガ島 さ行ってみたば、何と大した構えの門で、なかなか開けられそうもないような厳 重な門だけど。どういう風にして開けたらええ..て工夫したば、キジは飛んで行っ て上から入って錠あける。それから犬も猿も桃太郎も入り込んで、そしてみんな 鬼共ば降参させて、こんど、 「何でも言うこと聞くから、有りったけの宝あげっし、言うこと聞くから、生命 だけ助けてくろ」 て、鬼ども言うたずも。そしてこんどは金だの銀だの、サンゴなぁ、ええもの いっぱい入ってた宝物の箱出してみんなもらって、車さ一つに積んで、キジは綱 引くエンヤラヤ、猿は後押すエンヤラヤとして、そしてめでたく、じさとばさど さ帰ってきて、そしてじさにもばさにも喜ばれ、お上からも御褒美もらって、み んなに喜ばっで、桃太郎という有名な名前、今でも残っているど。むかしとーび ん。 |
(高橋しのぶ) |
>>お杉お玉 目次へ |