33 意地っぱりの話

 むかしあったど。
 山の中に狩人の夫婦が住んでいて、子どもがないので寂しがって暮しったど。ある年の冬、雪のものすごく降った朝、おっかさんが先に起きて、入口の雪を払おうとしたら、ちょっと先の山に黒いものが見えるど。
「あれはきっと、山鳥に相違ない」
 と、そう言うもんで、親父に教えなくてはなんねぇといって、
「山鳥だから、早く起きて来い」
 と、そう言うて呼んだところ、親父は山鳥と聞いたもんだから、寒いげんども無理して起きてきて眺めたら、
「なぁに、あんなもの、山鳥でねぇ、木の根っこだ」
 というもんで、おっかぁ、「いや、ありゃ山鳥だ」。親父は、「木の根っこだ」と二人で争ったんだ。
「んだ、根っこだか山鳥だか、試しに鉄砲で打ってみんべぇ」
 と言うんで、親父さんが鉄砲でダーンと打ったところが、そうしたところが、山鳥であったもんだから、パーッと飛んで行ったもんだ。そしたら親父は、
「飛んで行ったって、根っこだと困った」
 て言ったそうだど。むかしとーびん。
(渡辺好「小国・昔ばなし」所収)
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