12 古屋の漏

 荒屋で非常に困った百姓でありながら、すばらしい馬を持っておった。
 んで、ある秋の夜、雨が降ってきて、雨漏る。狼は馬をとって食いたい。馬喰はそれを盗みに入ったわけだ。んで、狼は厩に入ったところが、じいさん、ばあさん話している。何と言うたかと言うど、
「世の中には恐いものは、化物はいるし、鬼も何もいるけれども、古屋の漏るくらいおっかないものはない。なぁ、ばば、ひどいぜ、まず、こんな恐っかないものはないぜ」
 と。そして寝た。狼はそれを聞いでて、
「古屋の漏るて何だろう。化物よりも何よりも恐っかないて、何だろう」
 そのうちにガサゴソ、ガサゴソていうの来た。で、隅にひっついて、隠っでおったところが、やにわに、タテゴかけらっだ。そして、取り出したところが、人間がゴローッ。んで狼が馬のタテゴをかけらっで、馬喰をのせて一目散に逃げて行った。その音で気ィついて、じさばさ、戸じまりをみっちりした。むかしどーびん。
(塚原名右ヱ門)
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