11 土蜘蛛退治むかし、あるところに、長者がいてあったど。その長者に、きれいな娘がいたもんだから、可愛いがって長者は育てておった。そうしたところが、ある時にそこの家にきれいな男の人が尋ねてきて、泊ったど。そうしてその娘と、若い男だから仲よくなったど。それで若い男は帰って行ったんだげんども、時々その娘のところに通ってくるようになったど。そしてそれがだんだん月日が経つに従って通ってくる回数が多くなって、夜になると、こんどは来るようになったど。んで夜になって、その若い男が通って来るど、娘が非常に苦しがる。もう大変な苦しがりようだ。んでこんど、長者も、「非常に、これぁ、きれいな立派な男なんだけれども、どういうことなんだろうか」 て、不思議に思って、娘のところに、 「お前どころに、じきにあの若い男ぁ来るんだけれども、着物の端に、針さ糸つけて刺してみろ」 そう言って教えたところが、娘も夜苦しいもんだから、どういうことだか不思議に思っていたもんだから、その長者のいうことを聞いて、針さ糸つけっだのを用意して、来たどき、着物の端に縫いつけだ。そうすっどその今までのきれいな男が、キャッと音を立てると消えてしまった。んで、娘もすうっと楽になった。んで、長者がその大きい音に、魂消て行ってみた。ところが娘が言うには、 「お父さん言う通りに針で縫ったところが、あんな大きい音立てて、いねぐなったんだ」 と、こう言う話だ。そんなことをやっているうちに、夜は明けて明るくなった。見ると、ポタリポタリと血の跡がある。そして長者は、 「これぁ、その何か化物だかも知んねぇぞ。おれ一人では駄目だから…」 て言うもんで、村人どこ頼んで、その血の跡をずっとたよって行った。そうしたところが、寺の傍からずうっと登って鎮守さまの脇を登って、ずうっと登ったところまで行って、この土の中に、ずっと入れるところさ入って行った。それで、 「これは土蜘蛛でないか」 て言うことになって、みんな村人は唐鍬からトキパシから、鉄砲から槍から持(たが)って行って、その土の穴を掘って行った。掘って行ったところが、土の穴の底のところに、七尺もあるような大きな蜘蛛が針に刺されて苦しんで、目をむいてギラギラていわせっだ。それをみんなで寄ってたがって、槍で突いたり、いろいろして退治したけど。 んだから、あんまりきれいな男さなど、目呉れるもんでないど。むかしどーびん。 |
(塚原名右ヱ門) |
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