5 夜の蝶むかしあったけど。あるところに、夜更しばぁさんがいて、夜遅くまで起きていっけど。ある晩、 「こんばんは、こんばんは、おばぁちゃん、今晩一晩げ泊めてください」 と、やさしい声立てて来たから、おばぁちゃんが、こう歩(あ)いで、ガラガラと明けてみたば、こんな小さい女の子、 「おばぁちゃん、どうぞ、この灯りをたよって来たなだから泊めて下さい」 おばぁちゃんが、「大変だったなぁ」て言って、おばぁちゃんの寝床(とこ)を伸べて、「わたしの寝床はいらないがらな、おばぁちゃん」と言ううちに、―今は電灯だげんど、むかしは石油でランプというのをとぼしていだったもんだ―パッパッとこの袖で消さっだど。おばぁちゃんが、ほじゃおれに抱(だ)っこでもして寝っかなと思って、こうして待(ま)ちっだげんど、その子どもは来ね。小さいからおれの足元さでも行って寝っだべと思って、朝起きて見たところが、その子どもはいない。不思議だなぁとばぁちゃんが思って、自分の寝床を上げて、こんどはグラッと戸を開けて掃除にかかって、パンパン、パンパンと、このハタキで叩(はた)いたところぁ、蝶はファファ、ファファと出てきて、 「おばぁちゃん、夕べはありがとうございました」 と、ずうっと戸開けてたところから出はって行ったど。そうすっじどおばぁちゃん、「あら、蝶であったなぁ」 と。そうしてこんどは、灯(あか)しを久しく点けっだからだべなぁと思って。 んだから、年寄りと子どもはあまり夜更ししないで早く寝ることだそうだ。とーびんと。 |
>>置賜平野の昔話2 目次へ |