44 一休和尚

     (1)
 一休和尚だ、自分の叔母になった人が、とっても色の黒い人だったど。そしたば、冬になって雪降りになったわけだべ。そしたら、
降る雪がお白粉なれば手に受けて
お黒の顔にぬりたくぞ思う
 と詠んだど。
(川井宝衛)

     (2)
 一休和尚が小僧んどきに、和尚さま拵ったネズミと、一休が拵ったネズミ、
「どっちのネズミ、猫は持って行んか」
 て、お寺さま言うたって。そして、
「たしかに、おれの拵ったネズミ持って行ぐ」
 て、一休が言うたど。
「いや、ほげなネズミもって行かねごで。確かにこっち持って行んから見ろ」
「ほんじゃ、猫放して、試してみろ」
 猫放したら、一休和尚拵ったネズミもって行ったど。そしたれば鰹節でこさったネズミだったど。
(鈴木よし江)

     (3)
 一休和尚が小僧のとき、
「今日、オジサイだから来て呉ろ」
 て、お使い来て行ったていうわけだ。んだげんども何処(どっ)からお使いに来たのか分かんねがったど。
「どこだべ」て、ずうっと見て行ったど。そうすっど大和尚がなんぼ見ても分かんね、探(た)ねらんね。そうして行ったば、「ここだ」て。「何で分る?」て言うたば、門さ山刀(なた)コ下がっていだっけど。
「小山(こな)刀(た)(こっちの方)だから、ここだ」
 て言うて入ったって。
 そして入ってみたば、お膳が出たっていうわけだ。そしたら、拝んで、お膳の前さ坐ったら、
「お吸物の蓋(ふた)とんねで上がっておくやい」
 て。お吸物の蓋とんねで食えるかどうか考えていたど。そしてしばらく経ってから、
「こいつ冷たくなったから、蓋とんねで、取換えてもらいたい」
 て言うたど。一休和尚ざぁ、そういう人であったど。
 また、橋工事しった時、大和尚と二人で行ったど。そしたらば、
「このハシを渡るべからず」
 ていう立札たっていだっけど。
「こいつ何としたらええ、行くべきぁない」
 そしたら、
「このハシを渡るべからず、だら、真ン中行ったらええべ」
 て、真中通って行ったど。
(鈴木よし江)

     (4)
 じさまとばさまで、四十雀飼っていたど。そうすっど、何かしてその四十雀が死んだど。すっど、うんと大事にしていたんだから、お寺さまに引導渡してもらって埋めんべて、そして行ったど。そしたら一休和尚が小僧の時だ。
「このばさま、おれ、鳥さ引導渡すなんてもったいない話だ。一ついたずらして呉れんべ」と思って、「おれ、引導渡してくれんべ、汝、小鳥の身としてシジュウカラとは行き過ぎる」
 て言うたど。
(鈴木よし江)
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