42 福は内

 ある部落で、どこの家でも「福は内福は内、鬼は外鬼は外」て言うて豆撒くべ。そしたら、鬼はある部落さずっと来たんだど。そしたらある一軒が、「鬼は内、鬼は内、福は外、福は外」なていう家一軒あったどこだど。
「はぁ、福は内、福は内て言うのに、ここの家ばり、こりゃ鬼は内なて言う、この家さ行って御馳走になってみっか」
 て思って、「今晩は」て入って行ったど。そしたば家の人はみんな居てやったど。
「あらら、鬼さま来ておくやった。よく御座った」
 どて、寄せ申して御馳走したど。そしたばその鬼も喜んでよろこんで、御馳走になったわけだごでな。そして鬼は酔えで倒っだもんだから、そして家の人もかげで見っだど。そしたばいつの小間(こま)に行ってしまったんだか、家の人も知しゃねうちに、鬼いなぐなったんだど。
「あらら、鬼居なぐなったな」
 て、茶の間さ行ってみたらば、打出の小槌あんなだけど。そしたば、その家は貧しいがったべげんど、安泰になったど。
(中條ちゑの)
>>置賜平野の昔話2 目次へ