38 灰の発句

 ある寺さ化物できて、住職いらんねがったんだど。恐っかなくて。そして部落の頭のええ人だったべ、
「んだらば、本当に化物出っか出ねか、おれ行って、今晩泊ってみる」
 て、お寺さまさ行ったんだど。そしたら囲炉裡端さ化物出て来て、灰ならし持って、
      灰ならし 灰は海辺の潮にけり
 て、毎晩、その歌の文句、尻の文句考えらんねために苦しんで死んだんだど。その人がよ。毎晩出て囲炉裡撫でんのだど。そうすっど泊った人、よっぽど頭のええ人だかなんだか、
      囲炉裡も海か 沖を眺むる
 て、歌の文句で止めて呉れたんだど。そしたらそれから化物出てこなくなったど。
(清野キヨ)
>>置賜平野の昔話2 目次へ