22 三人の若衆ある旦那衆の家で、大きい百姓だそうだ。そこに太郎に次郎に藻屑(もくぞう)という三人が雇わっで田の草とりしったど。一生懸命でよ。三人で、「何一番欲しいもんだえ」て話出たんだど。そしたところぁ、 「おらぁなぁ、一斗樽立てて飲んでみたいなぁ」て、一番の太郎が言うたど。 「ほう、よくそんがえ飲みたいもんだなぁ」 て言うたど。二番目の次郎は、 「おれぁ、盆さすぎなり(山盛り)金欲しい」 て言うたずも。 「いやいや、その金何すんのや」 て、馬鹿にしていたずも。それから「藻屑、お前は」て言うたら、「おれは何も欲しくない」て言うたど 「欲しくないざぁ、あんまぇちゃえ、この野郎、三人でここで語りくらしったんだもの、語れ」 て言うたんだど。そしたらあまり言うもんだから言うたど。 「おれ、旦那どこのお花さんみたいな欲しいな」 て言うたど。 「この野郎ほに」 ぐらいで、押っつけっだずも。そいつこんど旦那がうしろに立って聞いっだというわけだ。そうすっど家さ行って聞がっだわけだ。 「お前だ三人何話語って、稼いで呉(け)だもんだ」 て聞かっだど。そうすっど太郎は言うたって。 「おれ、一斗樽立てて酒飲みたい」 て言うたど。 「はぁ、ほうか。それはあまりええから、呉(け)っから」 て言わっだって。それから二番目言うたって。そしたら二番目は、 「おれぁ、盆さすぎなりに金欲しい」 て言うたずま。そしたらば、旦那、 「それもあまりええ」 て言うたって。それから藻屑だど。「おれは何も言わね」「何も言わねざぁあんまい。言うたどれ、おれぁみな聞いっだ」 「おれ、お花さんみたいな、嫁さん欲しいって言うた」 こう言うたずも。 「それは、おれは出来ない。お花に聞かねど分んね」 て、こう言うたってよ。それからお花呼ばって聞いだというわけだ。 「おれ、なんだたて、ほがなこと語んなだべなぁ」 て言うたど。 「ほんじゃらば、唄詠みすっから、唄詠みで負けたら、藻屑のおかたになっけんども、そんでないごんだらならんね」 て、こう言うたど。 「ほんじゃ、お花さんが歌え」て言うたど。 須弥山の山より高く咲く花に 何どて心かけたや 他人の藻屑や と、お花さんが言うたど。そうすっど藻屑歌ったわけだ。 須弥山の山より高く咲く花も 落ちれば藻屑の下になるらん と、こう言うたずも。そして負けたど。そしてやっぱり大きいこと願えばええこと、その家の聟さまになったど。どーびんと。 |
(中條ちゑの) |
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