19 産神問答

 先には乞食ざぁ、来たものよなぁ。そしてお宮のようなどこさ一晩、泊っどこないから宿とって泊っていたというわけなんだど。そしたれば夜中になったれば、パカパカ、パカパカて馬さのって来たけど。神さまが。そして神さまが、
「今日は子どもが生れっどこだから、そいつさ寿命授けて来(こ)なねから、行って助(す)けろ」
 て、来たていうわけよ。そうすっど、
「今、おれがお客さまで行かんねがら、君、一人っ子で行って授けて来て呉(く)ろ」
 て言わっで、
「ほんじゃ行って来っから…」
 て、馬さのって行ったって。そうすっど、乞食が「はて、奇態なこともあるもんだ」と思っていたんだど。そのうちまたもどって来たって、馬で。そして、
「今、生まっじゃ、可哀そうだげんど、十三才にしてノミとアンブ(あぶ)の寿命授けてきた」
 て語っていだって。そうすっどその乞食が、
「十三才にして、ノミとアンブの寿命授けてきたっていう。ここらの人だら分んべがら、おれ、そん時来られっどもないから、こういうこと、昨夜(ゆんべな)聞いたから、あの子どもがなんぼでどういう風になっか見てろ」
 て、こう言うて行ったもんだど。
 そうすっどその子どもが十三才になって大工になったど。大工になっじど、ノミとカンナで孔堀りするわけだ。その孔掘りしてっどぎ、額さアンブが止まったんだど。そのアンブをちょっと突っついたので、そいつが元で死んだって。そうすっど、
「やっぱり、ないごんでないな」
 そういうことあったど。どーびんと。
(鈴木よし江)
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