16 猿聟むかし、娘三人持ったじさまいだったけど。そして田んぼさ水引かんねくてししゃまし(困り果てて)しったとき、猿ぁ来て、「じさま、じさま、娘一人呉れっじど、おれなど一晩げで田さ水かけて呉れる」 て、猿が言うたって。そうすっど誰行ぐというわけだ。誰も行く人いない。そうしたらば一番末の娘が、 「ほんじゃら、おれが行く」 て行ったって。そうすっじど、 「じさま、じさま、水など、だんぶりかけて来たぞ」 て来たど。そして行ってるうちに、子どもが出たって。その子どもが生(う)まっで、おぶって里帰りすっどき、餅ついて、 「重箱につめて行んか」て言うたら、「重箱さつめっど、重箱くさいってじさま言うから…」て、臼がらみ背負って行ったって。そして崖っ端にコブシの花咲いっだの、 「あいつとって、とって」 て、子どもが言うたって。そうすっど、「ほんじゃ取って呉れっから」て、臼置いて上っど思ったら、 「臼置くど土くさいぐなっから」 て言わっで、臼背負って上ったって。そして枝折(お)だっで猿ぁ落ちて行って、娘だけがおぼこ背負って帰って来たど。とーびんと。 |
(鈴木よし江) |
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