14 蛇聟むかし、あるところに、父親、三人の娘育てていたんだけど。そして田んぼさ行って、日でりだったか、水かけ困って水見しったのよ。そんどき、蛇が蛇の姿して出てきたわけでなかったべげども、来て、「おどっつぁ、おどっつぁ、水かかんねで困ってる、おれ、水かけて呉っから娘一人呉ねが」 と言うたど。水掛けるばり一心なもんだから、そんで承諾して「ええどこでない」と。そして承諾して来たものの、帰ってきて、娘が嫌んだと言わっだら、なじょすっかと思って、家さ帰ってきて、蒲団かぶって寝っだど。そしたば娘、 「おとっつぁ、御飯出たから、御飯あがれ」 と、一番大きい娘が起しに行ったんだど。そしたらば、 「今日、こういう風なことでよ、田んぼさ、水だっぷりかかっていだった。んだからその約束果さねば困るので、家さ来て思案して寝っだどこだ。お前気の毒だげども、嫁に行って呉(け)ねが」 と言うたば、 「何語っていんなだか、ねぼけ、ほに。そげなどこさ嫁に行ったりされっか」 て、枕蹴っぽって逃げて行ったど。 「あら、困ったもんだ、やっぱり誰も行く人、そげなどこさ嫁に行くなんていう娘いたごんでないごで」 て思って、また考えて寝っだどころさ、二番目の娘起しに来たど。そしてその通り同じこと繰返して言うたら、二番目の娘にもふらっじゃわけだど。 「そんなとこさ行く奴いっか」 て。こんどはいま一人しか娘いねわけだから、絶望のような気になってはぁ、駄目なもんだと思っていたところさ、三番目の娘起しに来たど。そして、 「こういう風なことよ」 て、末の娘さも言うたど。と、末の娘ぁ賢こいがったか、何(なえ)だかよ、 「そんなことなどええどこでないから、おどっつぁ、心配しないで御飯あがれ」 て、御飯食(か)せだど。そして嫁入りに行くとき、こういうふうなこと願ったど。 「フクベン千と針千本、嫁入り道具にもらいたい」 て、その娘言うたど。 「そんなこと、いと易いことだ」 と、そろえて呉(け)で、自分が沼さ入るまでに迎えに来て、蛇だか何だか沼さ入っていった。そうすっど自分が入る前に蛇さ、針千本とフクベン千投げてやったんだな。そうして退治したという話だった。とーびんと。 |
(三瓶ちの) |
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