12 おぶさろうの化物むかし、鎮守さまにお詣りに行く人いなくなったけどはぁ、何してだか…。そしたればお詣りさえ行くど、「おばっだい、おばっだい」て音立てんだも。ほだもんだから、誰もお詣りに行く人いながったど。そしたところがある息子さんが居でやって、じっちゃとばっちゃさ、「おれぁ、おばっだい、おばっだいて言う、なじょなもんだかおぶって来っから…」 どて行ったら、「行ぐな、行ぐな」て、一人息子だったから、おさえだそうだ。恐っかないど思ってよ。そして「行ぐな行ぐな」て言うげんども、夜一人っ子で行ったずも。そしたらやっぱり「おばっだい、おばっだい」て言うので、「ほれ、おばれ」て背中向けたど。そしたばドサッとおばったずも。そしておぶって来たんだって、家さ。 「化物おぶって来た」 て、家さ行ったって。そしたところが、 「厩だごで、そいつぁ、厩だごで、厩さ行げ」 て、家の人ぁ固くなって寝っだど。そうしたところがドサッと落としたずも。そうして明るくなるのばり待って、 「何ぁぶさって来たもんだ」 と思って明るくなるばり待ちでで見たれば、お賽銭箱さ金一つだったど。誰も、皆、さわんないもんだから、金が、「おばっだい、おばっだい」て言うのだったど。そいつで安泰して暮したんだど。とーびんと。 |
(中條ちゑの) |
>>置賜平野の昔話2 目次へ |