4 かちかち山

 じさま山さ柴刈りに行って、狸とって来たど。そして、
「晩げ、ムジナ汁すっから…」
 て、庭さ吊るして置いて行ったど。そうすっどばさまが米搗きしったど。
「ばさま、ばさま、おれついで呉れっから解(と)いて呉ろ」
 て言うたって。
「いや、じさまにごしゃがれっから、とかんね」
「ええから、おれ搗いて呉れっから、といて呉(く)ろ」
 て言うて、そしてといて呉っじゃというわけだ。そうすっど、ばさま殺して、ばさまの着物きて、米搗きして、
「晩げムジナ汁、麦飯にムジナ汁」
 なて歌うたうて米搗きしったけど。そしてばさまどこ煮ていたら、じさま帰ってきて、
「ばさま、ムジナ汁出たか」
 て、来たんだって。そしたら出た出たって、ばさまば食せだってよ。そしたら、とっても撓(しな)こくて食んねがったど。そん時、
「なんだ、この、撓(しな)いごど」
 て言うたどこさ、美しい鳥ぁとんできて、
「撓いも道理、ばば汁だ」
 て、狸ぁ逃げて行ったど。じさま泣いっだどこさ、兎が来て、「おれ、仇とってくれっから、じさま、くよくよすんな」
 て、そして兎が狸どこ誘って、焚物とりに行ったとき、帰りに背中さ火点けたんだど。そして来て、狸の家さ、
「くすり、くすり、火傷のくすり」
 て、くすり売りにふれて行ったど。そして唐辛子入(い)っだくすり貼って呉っだど。
 そしてこんど治ったと思うど、「舟遊び行かねか」て、土舟と木舟拵(こさ)って、舟遊びに行って、兎の舟がスッスッと行んけんども、狸の舟、濡っで来るにしたがって、ガックリガックリと欠けっどこだど。
 そして、じさまどこさ来て、「狸、海さ入って死んだから、仇とって呉(け)たから…」て言うたど。どーびんと。
(鈴木よし江)
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