3 かちかち山

 兎と狸ぁ、狸ぁ一年中人ばだまかしているもんだから、
「今日はお天気ええから、遊びに行かねかやい」
 て、兎は狸どこさ言うたんだど。
「あまりええなぁ、今日はお天気ええから行くべ」
 て言うて二人して山さ行ったど。そして狸どこさばりいっぱい背負わせたど。そして兎はまずうしろの方から追かけて来たというわけだべ。そしてカチカチて火点けたど。そしたば、
「何だい、兎どの、カチカチって何だい」
「カチカチ山だからだ」
 そのうち、火ボウボウと燃えてきたていうわけよ。そうすっど、
「何だい、ボウボウって…」「あれはボウボウ山…」ているうちに、「アチアチ、アチアチ…」て言うもんだから兎は逃げて行ったど。そして火傷したわけだべ。んだもんだから、兎は「火傷の薬、火傷の薬」て、あきないに来たわけだごでな。そしたば、
「おれ、火傷したもんだから、つけておくやい」
 て来たそうだ。そしたら南蛮味噌すって来て、ベッタリつけて呉っだごんだど。そしたば、「いたい、いたい」て言うんだど。そしたばまた兎は辛子をつけて呉(け)たんだど。
 そのうちにようやく火傷治って来たんだど。またお天気のええ日、
「今日は海さ遊びに行かねがやい」
 て来たんだど。
「はぁ、海さが、ほんじゃ海さ遊びに行くべ」
 どかて、こんど海さ行ったば、
「おれはこの舟さのるし、お前はその舟さのれ」
 て言うたんだど。「ほうか、ほんじゃ」て言うて、狸どこ泥舟さのせたんだど。ほうしたら兎のお舟は木の舟、狸のは泥舟なもんだから、ぼっごっじえ、狸を仇とったんだど。兎ばり無事に帰って来たんだど。
(中條ちゑの)
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