28 南の山の馬鹿聟― 白髪の餅 ―

 南の山のあるどこで嫁もらったど。そして初口(しょぐち)に聟招(よ)びというんだか、嫁の家さ聟もついて行ったんだど。ところが初聟来らっじゃもんだも。うんと御馳走すんべと思って、牡丹餅搗いて御馳走したらええがんべとて、こういう話であった ど。
「んじゃらええがんべ」
 て言うごんで…。ところが準備して食せんとしたとこさ、子どもぁヒョコヒョコ這って来たどこだど。
「お前、こっちゃ来んなよ。恐っかいがらな、恐っかいがらな」
 て言うたど。聟は、
「何だ、恐っかい、恐っかいて、何が恐っかいんだ」
 そうすっど、そのうちにお賄い出て、
「さぁ、上っておくやい」
 て、お膳出したど。
 ところが、聟も何と言うたて手出しすねもんだから、家さおみやげに持って行かせんべと言うて、重箱さ入っで娘と帰って行って、途中まで行ったげんど恐っかなくて恐っかなくて居っこんだど。嫁は、
「何、そんなことしてっこんだ」
 て、居たど。そうすっど、恐っかい恐っかいて重箱降ろしたどころが、ガァッと口開けたところが、小豆餅が真白になったというごんだど。
「ほら見ろ、まず、小豆餅、白髪はえて、恐っかいず、恐っかいず」
 ていうて逃げたという話だ。
(中條貞次)
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