26 南の山の馬鹿聟― 唐津焼か南京焼か―

 沖中から嫁もらって、かかの家さ、南の山から招ばっで来たど。ちょっとずるいような人でもあったべちゃ。亭主になった人ぁ。んだから教えてよこしたど。
「お茶出したときぁ、おどっつぁん、そのお茶道具買って喜んでいたから、ええ茶碗だなぁて賞めて飲んできて呉ろな」
 て言わっで行ったど。
「唐津焼か南京焼か、て聞いて飲んできて呉ろ」
 て教えらっで行ったど。そしたば、お茶出たど。そのお茶持(たが)って、
「これぁ、南京焼か唐津焼か」
 なて、パェンパェンパェンと叩いたど。聟、初めて招(よ)ばっできたなだまず、娘を呉っだ親父が気付いて聞いっだずわけだ。
「床柱作ったな、傷ましいの、ちょっとした穴ある。そこ、おどっつぁ気にしてっから、見せらっじゃら、ここにちょっとした穴あっこんだと言わっだときには、なぁに、こがえなどこ、ねっから差支えない。掛物でも掛けておくと差支えないごと、おどっつぁん。て言うど喜んでいるそ」
 て教えらっで行ったど。「そうか」て行って、やっぱり見せらっだど。
「ここに穴、ちょっとした穴あって、床柱に。そんで、でかさなくっているどこよ」
 て言うた。
「こげなもの、差支えない。差支えない。掛物でも掛けておくと差支えない。おどっつぁん」
 なて言う。なかなかええ息子だな、て、嫁のおどっつぁんが喜んでいたど。そしたところが、こんど、
「馬もこの頃飼った。そんで馬飼った、見て呉ろ、まず」
 て言わっだところが、
「ええ馬だな、おどっつぁ、ええ馬だな、おどっつぁ」
 て言うて、あちこち撫でていた。背中、こう撫でていた。そしてこう尻尾つかんで、尻尾上げて尻の穴見て、
「ここにも、おどっつぁ、木っぷし穴ある、ここにもおどっつぁ、掛物かけておくとええごで」て。
「南の山の馬鹿野郎ていうんだ、ほに。馬鹿野郎だ、娘呉っでおかんね」
 て、娘、とっかえさっだど。
(須藤とみゑ)
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