21 犬の宮と猫の宮

 犬の宮にはこんな話があるど。
 むじなが金原山の岩さ孔あけて巣くっていたんだけど。そのむじな退治に巡礼みたいな人が来て教えたというごんだけどな。
「丹後但馬の国に二毛犬と四毛犬がいっから、そっから借りてこい」
 て言うので、借りで来たど。ところがむじなはすばらしいもんであって、二毛犬も四毛犬も、むじな退治した後で、傷ついて殺さっでしまったど。そいつを祀ったのは、犬の宮だったど。
 高安にある猫の宮は、毎晩げ、かかがウラさ行(い)んこんだものな。猫がそこさ追いかけて行くもんで、
「奇態なごんだ」
 ていうごんで、後追って行ったど。自分も。
「この畜生、ほに。おらえのかかめさ、何するつもりだか」
 て、刃物持って行ったんだど。かか、便所さ入る。猫、外に待ってだどこ、
「この畜生」
 て言うもんで、首、ばちっと切ったど。そしたら、チャアーと猫の首ぁとんで行って、ドダンと落ちだというんだ。
「なんだろう、奇態だ」
 て、そしてあくる日、見たところが、その、大蛇がそこさ落っでだというんだ。その大蛇の首さ猫が下っていたど。
「ほんじゃ、いま少しでかか殺されっどこだった」
 そんで、その猫を祀ったのが猫の宮だ。
(中條貞次)
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