20 虎猫

 むかしあったけど。
 和尚さま一人ばりいるお寺あったど。貧乏な寺だったど。猫と二人で、和尚さまいたなだったど。そして猫は虎猫だったど。
「こんど食うに食んねぐなったぜはぁ、虎。にしゃさ何食せる」
 て言うたど。そしたらニャォニャオと言うていたけど。そしてはぁ、ツウツウと行ってしまっていなくなったど。
 あるどこの旦那衆の娘死んだど。そして、死んだもんだから、和尚という和尚、そこらじゅうの和尚は来たど。葬式のときに棺をぐうっと空さ上がったど。
 どの和尚さまもお経上げっけんども、決して下がって来ねもんだずも。その和尚さま一軒残ったずごんだずも。
「あの貧乏和尚だて、頼んで来んなねべ」
 て、こういう風に言うて、その家の人頼んで来て、そいつで、どうせ下がんねがもしんねぇべげんど、と思ってその和尚頼んで来たんだど。そしたところがその和尚、
    ナムカラヤ
    トラヤーヤー
    トラヤーヤー
 て言うたら、ツウツウ、ツウツウと棺が下がって来たど。
 んだから、トラ猫だから、トラヤーヤー、トラヤーヤーというのだど。
(中條ちゑの)
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