11　糠福と米福

　むかし、ままかかいだったど。
　山さ栗拾い、二人で行ったど。ところが弁当あずけたらば、糠福さ糠ばりの弁当で、米福さ米ばりのだったど。
　まず、山奥さ行って、
「御飯、こげなで食(か)んね」
　どて、言って、大きな堤あっどこさ、糠ばりの御飯投げてやったど。そしたれば、ぶくぶくと、おかちゃ出てきてなぁ、
「おれ、死んだげんども、にしゃかかだぞ」
　て言うて。そしたら何か打出の小槌あずけたど。そして家さ行って「栗出ろ」て言うて栗出したら、「蓆貸せ」て蓆出して、でっすら栗出したど。そして、
「おっかさ、はいっと」て言うたら、「大変な栗だな」て言うたど。
　こんど、長者さまのお祭りだど。そうすっど、お祭りさ行くに、稲こいだり、挽いたり搗いたりして、御飯炊いてろと言うたど。そうしたところが、糠福は「はい」て言うてだらば、友達来て、糠福さ、「お祭りさ、見にあえべ」て言うたど。
「おれぁ、これから忙がしくて行かんねごで、おれ、稲こいだり、挽いたり、搗いたりして御飯炊いておけて、おかちゃに言わっだから行かんね」
　て、こういう風に言うたて。そしたところぁ、「助(すけ)っから」て、みんなして助(すけ)で、そしてはぁ、ちゃんとして宝物の打出の小槌叩いて、
「お祭りさ行んから、ほんじゃ、衣裳出して呉ろ」
　て言うて、立派な衣裳出してお祭りさ行ったらば、大変なええ女になって、立派な衣裳着て行ったもんだから、長者さまで、
「さぁさぁ、こっちゃござれ、こっちゃござれ」
　て、ちゃんと上げ申したど。そうしたどころぁ、米福とおっかさんが釜の火焚きしったけど。そしたらそこさ饅頭持って行って、糠福は米福さあずけだったど。それから家さ来て、知しゃねふりしったれば、
「姉ちゃ、姉ちゃ、あのお姫さまに饅頭もらったの、呉れっから…」
　どかて、饅頭もらったこと言うど、「ほんじゃ、ええがったな」て、知(し)しゃんぷりしったど。
　ところが長者さまで、娘もらいに来たって。そしてトントン、トントンと車で 迎えに来たらば、
「こっちの家に糠福という娘いたから、そいつもらって行かんなね」
　て、長者さま言ったど。そしたら、「糠福であんめぇ、米福だべ」て、こういう風に言わっだど。そしたところが、「糠福であんめぇ、米福だべ」て、後妻おっかが言うたど。
「ほんねず、糠福もらって来いて言うたんだ」
　て。そして、
「ほんじゃら、糠福と米福で唄よみして、唄よみに勝った人もらって行くべ」
　て言うたど。
　　　　　バンサラヤサラコガネサラ
　　　　　皿十山に雪ふりて
　　　　　雪を根として育つ松かな
　どて、糠福は唄よんだど。そしたら米福は、
　　　　　今朝たっだ猫の糞(かえし)　ほやほやと
　て、米福は言うたど。そんで糠福はとうとう車にのって、トントン、トントンとつれて行がったど。米福は泣いて、おっかさ、可哀そうになって、井戸のぐるり廻って、井戸の中さ入って死んでしまったど。どんびんと。
（中條ちゑの）
>>置賜平野の昔話１ 目次へ