10 糠福と米福糠福と名付った娘一人置いて、おっか死んで、後からまた貰ったおっかどこさ、 米福という娘出だったど。そして糠福じゃ、賢い娘だったど。そしてその後妻おっかが、「今日、栗拾いに行って来い、姉ちゃの後ばっかり拾えよ、にしゃなど見つけらんねんだから、姉の後ばっかり歩って拾って来いよ」 て、米福さ教えてやったど。姉が袋さ、後妻おっかなもんだから、いじめたくて袋縫って呉っだな、底抜けあずけて、そうして、 「米福の袋はええぐ縫って呉たから、姉なんぼ拾って呉っでも落して行んから、姉の後ばり拾って行けよ」 て。それも気ぁ付かねで拾ってるわけだげんども、 「なんぼ拾っても、おれの溜っていねぇ」 て。 「このぐらい拾った」 て、米福に言わっで、家さ来たば、 「妹さえもそのぐらい拾うも、姉拾わんねぇじゃあんめぇちゃえ」 て。「ずぐたれだからよ」て、おんつぁっだど。 そして糠福が殿さまさ貰わっだど。そんどき、そのお篭さのせて殿さまが連(つ)っでったど。そしたば、 「呉っでやる」 て、くたまにしてだもんだから、おっかが「呉っでやる」て、そのお篭さのって行ったらば、米福が、 「おっか、おらもああいう篭さのっだい。ああいうええ着物きて行きたい」 て泣いだって。 「あがなもの、どこさか連(せ)て行かれんなだ。ねっからええぐない」 「あら、ああいうなのさ、のって行きたい」 て泣いたど。米福は…。そしたば、 「よしよし、おれ、それよりええ篭さのせる」 て、まいど、土ズルスというスルスあったど。土ズルスの皮さ入っで、そして井戸のぐるり、その後妻のおっか、娘のせてガラガラと走ったところが、デンゴロ返ってその井戸さ落ちて、娘なくしたど。その先の娘せめたために、罰当ったもんだど。んだから、せめらんねど。とーびんと。 |
(須藤とみゑ) |
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