8 蛇聟

 あるとき、ええ男にばりなって来る者ぁいたもんだから、…そしたらその娘がなんぼも痩せてくるようになったもんだから、不思議して、
「おれ、便所ささえも行くと、ええ男来てよ」
 て、おっかさんさ言うたらば、
「そうか、ほんじゃらば針さカンナ糸しておっから、針さカンナ糸つけて、かまわず、ええ男衣裳の褄先の端さ結(ゆ)すばいて、そしてかまわずやってみろ」
 て、おっかさが言うたど。そして刺して行ったら、そのカンナ糸の後ずうっと行ってみたところが、裏の竹薮の中さ入って、何かうなる音しったど。何だと思って耳当てて聞いっだらば、
「おれぁ、子ども腹さ入っで来たから、あの女殺すのだから、かまうことない」
 て、親蛇さ言うたら、
「なぁ、人間なんつぁ賢こくて、五月節句の菖蒲湯というのさ入っど、みな降りる。にしゃみたいな馬鹿者もないもんだ」
 て言うのを聞いっだど。そんで五月節句の菖蒲湯を立てるんだど。
(中條ちゑの)
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