5 猿蟹合戦むかしあったけど。蟹がヤキメシ拾い、猿が柿の種子拾ったのを、猿が交換して、蟹は種子を蒔いて、 オエザラハサミキル オエザラハサミキル て、一生懸命で、蟹、おがしったらば、芽ぁ出て、花咲いて、 ナラザラハサミキル ナラザラハサミキル て、おがして、大抵実(な)ったれば、蟹ぁ、 「おれにも一つ、赤いな、もいで呉ろ」 て言うたところぁ、もいで呉ねぇで、青いなもいで、蟹の背中さびたりとぶっつけたど。そしてはぁ、蟹がぶっつけらっで泣いっだけぁ、そこさこんど猿が、わればり食って…。家さ来て泣いっだら、臼が、 「何で泣いっだ」 て来たど。 「いやいや、おれ背中さ猿にぶっつけらっで、背中いたくて泣いっだなだ」 て。 「仇とって呉っから…」 ていたどころぁ、こんど栗も来れば蜂も来れば、牛糞(びたくそ)も来て隠っでいたど。そのうちに、 「蟹いたか、蟹いたか」 て、猿来たど。みんなてんでに、栗は囲炉裡にかくれる、臼は天井さのぼっている。うちに猿ぁ来たずも。 「蟹モサ、いたか」 誰も音一つ立てね。黙っていたら、ノコノコと入ってきて、 「寒いな」 て、囲炉裡の火起したらば、栗、バシッとはねて、 「あら、いたい、いたい」 どかて、こんど、「あち、あち…」て、水甕さ行ったらば、蟹はさまっで、 「あら、痛いこと、痛いこと」 ていたら、蜂に刺され、 「いらんね、いらんね、こんじゃ、逃げて行かんなね」 ていたれば、臼がゴロゴロ・ドンと落ちて来て、つぶさっだど。とーびんと。 |
(中條ちゑの) |
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