2 地名・その他

○小僧仇(羽黒川上流・米沢市関根)
 深い川の上さ寺があって、そこの小僧が和尚さんにいじめられて、その川に身を投げて死んだので、そこを「小僧仇」と呼ぶが、その後も幾人かが水泳に行って死んだそうだ。水窪ダムにより浅くなってしまった。
話者 須藤金次
採集 須藤智恵子
○ビッキ石(万世町桑山)
 置賜地方はむかし湖だった。そこに蛙(びっき)が住んでいて、神さまと賭をして、蛙は湖の水をみな飲み干してみせると言ったが、それはできなかった。それで蛙は神さまから石にされてしまった。
話者 須藤金次
採集 須藤智恵子
○八幡太郎の矢(米沢市三沢)
 西地堂の薬師、八幡太郎義家が打った矢が今の広幡の八幡宮にまで行ったのでそこに八幡宮が建てられた。
話者 我彦光貞
採集 我彦優子
○柳ケ原の妙円寺(米沢市)
 百年ぐらい前、米沢は城下町で、せまい町で、東は大町ぐらいまでしかなかった。その向うが松川橋で土橋であった。そのころ柳町(大町二丁目)に妙円寺という小さい寺があり、すすき野で昼もくらかった。ある時万世村の三郎兵衛という百姓が町に用達しに来て、親戚の家でお話して、お土産に板の油揚げ(米の粉をねって油であげたせんべい)をもらって帰るとき、橋を渡りはじめて、いくら渡っても終らない。そのうち提灯がちらちらして、一生けんめい渡っているうちに東の方が白々と明けてしまい、見てみると揚げは一枚もなくなってしまっていた。柳ケ原の狐だったそうだ。
採集 中村恵子
○雨乞い
 日でりのとき、お蔵王さま(蛇の神)にお詣りに行って、法じょう様が目かくしをして、お堂の中に入っていた。その中には井戸があり、それに新しい菰をかぶせると雨になるという。
採集 森幸子
○からす
 普通、夕方、西の方さ、からすは帰るもんだけど。東の方へからすが行くときは、あした天気が悪くなるという。からすは頭がよいから、山が荒れることを知って里に降りてくる。
採集 井上礼子
○十二月大晦日の食べもの
 関根(米沢市)字樋の口の須藤家では大晦日に一日中「ナマクサ」を食べない。むかしどこの家でも魚料理をしておったが、火を焚いてイロリのカギにナベを下げて魚を煮いたところ、蛇がカギにぐるぐるまきついていた。それからナマクサを食べないようにしたという。
採集 須藤智恵子
○ハンの木
 稲田の中に上の方だけ枝のある木がハンの木です。このあたりは山から遠いので、薪をとるのに不便でしたので、農家の人々が植えたものだそうです。暑い夏の日盛りに一服しに、ハンの木の下で涼み、秋の刈り入れには稲杭の代りになり、冬には下枝を切って薪にするようにしたものです。
話者 増川荘重郎
採集 増川百合子
○虫送り ― 川西町下小松
 虫送り、神おくり、悪病送りという行事が昔あった。永松寺の太鼓を初聟に背負わせて叩いたという。風神送りには風の神のわら人形を作って村境までもって行ったし、お田の神送りには刈上げの後に「おかげさまで…」と挨拶して送ったものだ。
話者 島貫
採集 山田富士子
○「ころころ」とやははえろ ― 正月十五日の行事
 カセドリ「餅呉ろ、ころころ、くご帽子かぶってアキの方からころげ入り申した」
 ヤハハエロ「センキ・スンバコ持って行(ん)げ」
採集 山田富士子
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