1 神   仏

○お文殊さまとお普賢さま(米沢の宿借り普賢)
 昔、お普賢さまはとても金持の神さまで、どうして金を減らしたらよいかと、毎日苦労しておった。そして文殊さまにその話したら、「そんなら、毎日御飯のときの箸を焼いてしまうと貧乏になる」と教えられたので、そうやったら貧乏になり、家も屋敷もなくなり、文殊さまにすがって家を借りることにした。そしたら文殊さまも、「私もこの家だけしかないが前は貸せないが、裏なら貸してもよい」というので、借り、文殊さまの智恵の足りないところを教えることにしたんだそうだ。今でも箸は火に焼かず川に流せという。
話者 色摩清見
採集 清水節子
○古志田の明神さま
 お明神さまというのは、火の中でオボコ産した人だけど。その人が祀られているもんで、古志田にはカタワも生まれないし、安産するそうだ。
採集 清水節子
○亀岡の文殊さま(高畠町)
 亀岡の文殊さまというのは、お蔵王さまに十年の約束で家貸したそうだ。そしたらお蔵王さまは「十」に「ノ」をつけて「千年」にしてしまったので、金の賃借はむずかしい漢字使うようになったそうだ。お蔵王さまというのは白蛇のことだそうだ。
話者 梅津政五郎
採集 梅津寛子
○亀岡文殊にある大黒天
 むかし、文殊さまに、米沢の侍がお詣りに来たど。大黒さまを拝んで、「こげな木の棒杭、何だい」といって、「試しに切ってみるか」と切ったら、血が出てきた。その侍が帰らぬうち、米沢の町の空に大黒さまの姿が現われ、その侍の家が火事になったそうだ。
採集 森幸子
○高畠高安の犬の宮
 坊さまが道に迷って、高安の山の方に入った。日が暮れたので石に腰をおろして三味をひいていたら、狸(むじな)が出て来て、「甲斐の国の三毛と四毛にそのこと教えんな」と三味に合せて歌いながら踊ったど。朝になって、狸がいなくなってから、坊さまは高安の里にさがった。そしたら里では、庄屋の家に、白羽の矢が立ったといつて、娘を年貢に上げなければならないと言って、大騒ぎしていたど。坊さまは夕べのことを言って、甲斐の国から三毛・四毛を買ってきた。その日がきて、犬を箱の中に入れて、山に置いてきた。夜になって狸が娘だと思って箱をこわして食おうとしたら犬だったので大喧嘩になって、朝見たら、狸がみんな死んでいたが、その犬も死んでいた。坊さまもたたりで死んでしまった。三毛・四毛犬と坊さまを祀って、「犬の宮」を建てた。
話者 森うゑの
採集 森幸子
○弘法大師
 弘法大師が石灰山(今の洞ケ沢)を通った時、そこで腰をおろしてサカサ木の杖をついて来たのを、さかさにしておいたら、それに根が生え、大木になった。
 また市野々を通ったとき、水を飲みたいと思っていたら、沢から水が流れてきたので、それからそこを「市野々清水」という。
 大師が餅を食うとき、餅がのどにつっかえねように、大根おろしと一緒に食うのだそうな。
話者 我彦光貞
採集 我彦優子
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