48 本間さま

 まいど、越後のノッタリに、マノミゾウという人いだごんだど。そいつぁ毎日炭小屋のさかさ小屋さ居て、雑魚釣りしてだったもんだど。そしたら仲間の人に、
「酒田の本間さまさ、うんと金持ちで大尽つうことだから、大尽つき合いすっぺ」
と言ったど。マノミゾウだら、
「そがなどこさ、何着て行くか」「ハカマと羽織着て行けばいいべ」といって、一緒に行ったごんだど。本間さまさ着いだば、わらじ汚したったもんだから、金のタライ出さっちゃど。仲間のみんなはありがたくて、水かけたばっかりだったど。マノミゾウだら、両足入っで、ごそごそ洗ったど。そしたば酒田の本間さまのおっか、
「いや、これ何ほどの大尽か分んねぞ」と言って、娘呉(く)っちゃくなったど。
「娘呉(く)っちゃくなったから、もらって呉ろ」と、おっか言ったらば、
「呉(く)れつう時、もらうごで」と言って、もらって、それこそタンス、パサミ、長持、タライともらって、大したムカサリ送ったんだど。そして行ってみたどこ、山小屋のさかさ小屋だったど。ほだもんだから、娘はおばさとおんつぁに、
「とてもりっぱな家だと言ってけろ」と言ってマノミゾウの嫁になったど。マノミゾウと雑魚とりしてうんと苦労したごんだど。
 そしているうちに、越後ののったりに、大した立派な家だげんど、化けものの屋敷だったもんで、誰もいねぐなった家あったごんだど。ほだからマノミゾウと嫁さ見はりしたど。マノミゾウだら恐っかなくて嫁の尻さ隠っちぇいだど。嫁一人で見っだらは、上段の床の間からミッチミッチという音聞えたかと思ったら、化けもの出てきて、ちゃんかちゃんか、ちゃりんちゃりんと踊り踊んだど。
 そして夜が明けてきたら、またミッチミッチと上段さ、いねぐなったもんで、上段開けてみたごんだど。そしたら大判、小判がざっくざっくとカメの中に入っていだったんだど。そいつぁ、まいどの大尽がかくしったお金が娑婆さ出たくって、七福神に化けて、おどりおどったんだべ。嫁はその金で家を修繕して、おっかとおど呼ばって幸せにくらしたんだど。とーびんと。
話者 桐沢 (米沢市梓山) 祖母
採集 梅津寛子
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