13 笠地蔵

 むかしむかし、おじいさんとおばぁさんが住んでだけど。おじいさんとおばぁさんは、蓑と笠を作って、貧しい暮しをしったけど。
 雪の降る寒じる年とりの日に、おじいさんは町さ蓑と笠売りに行ったけど。んだげんどさっぱり売んにゃぇもんで、帰ってくる途中さ、地蔵さま、裸つぶりで立っていやったけど。おじいさん、お地蔵さまを、もごせ(かわいそう)と思って、売るはずの蓑と笠を着せてやったら、蓑と笠一つずつ足んにぇもんだから、自分の蓑と笠も脱いで全部のお地蔵さまさ着せてやったけど。そして静かに家さ帰って行ったけど。家ではおばぁさんが、おじいさん、赤い魚や白い餅買って来っかと思って楽しみに待っていたどこさ、おじいさん帰ってきたど。そしておばぁさんさ、
「ばば、ばば、今日は地蔵さま、裸つぶりでいたけもんだけがら、笠も売んにぇがったし、蓑と笠着せで来たんだ。まず今日は何にもねぇがら、早く寝っぺ」て言って、二人で早く寝たど。
 そしたら夜中に、どこがらが、
「じじ家はどこだ、ばば家はどこだ、エンヤラヤー、エンヤラヤー」て聞えてきたんだど。そいつがだんだんと近くなって、おじいさんとおばぁさん、恐っかなくなって、ひと塊りになって寝ったったど。それから、すぐ家の傍で聞えてきて、
「じじ家はここだが、ばば家はここだか」
 ドスーンとものすごい音したけど。いやぁ、おじいさんとおばぁさん、恐っかなくて恐っかなくて、明るくなんなばっかり待っていだったけど。そして明るくなってから、表見てみたらば、家の前さ宝物だの、餅だの魚だの、それはそれはいっぱいあったけど。そいつは地蔵さま、雪の日のお礼に来たんだど。ほだからお地蔵さまじゃ大事にしんなねものだど。とーびんと、さんすけ眼に毛が生えて、けっけっ毛抜きで抜いたれば、めんめんめっこになりました。
話者 井上ムツ子(川西町中小松) 母
採集 井上礼子
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