11 瓜姫子

 むかしむかし、天邪鬼というすごくねたみの深い娘がいだったど。またあるどごさ瓜姫子ていう、すごくやさしい、機織りの上手な娘いだっけど。
 ある日、天邪鬼は瓜姫子が村中で評判ええもんで、
「おれも瓜姫子のようになって、瓜姫子の家さ住んでみてぇもんだ」と思って、天邪鬼は瓜姫子のどこ、
「山さ遊びに行ってみろ」て、誘って連(つ)っちぇったど。そしたけりゃ、天邪鬼は瓜姫子んどこ、着物全部脱がせて木さ縛って、天邪鬼は脱がせた着物を着て、瓜姫子の姿して、瓜姫子の家さ帰って行ったど。帰ってすぐ、機織りすっからって、言って、機織りやってみたところが、傷ものばっかり作ったんだど。家の人達も、「ずいぶん傷ものばっかり作るもんだ」って思っていだったけど。
 天邪鬼が機織りしていっど、窓のどこさ鳥が飛んできて、
瓜姫子の機、天邪鬼ぶんどった
 て鳴くもんで、家の人も「変なこと鳴くもんだ」て思っていだったど。そんじぇも何回も「瓜姫子の機、天邪鬼ぶんどった」ていうもんで、「おかしいなぁ」て思って、瓜姫子の好きなトコロていういも、山から掘って来て食わせだど。そしたけりゃ、瓜姫子はちゃんと毛をむしって、皮んどこ剥いて食うんだげんども何だべ、今日はただがむがむ食うもんだ」って思っていだど。そして、
「毛ぐらい剥いで食え」て言うたら、偽瓜姫子は「毛は毛のくすり」て言って食うのだど。
「んじゃ、皮ぐらい剥いて食ったら、ええべ」て言うど、
「皮は皮のくすり」て言い返すんだど。
「どうもおかしいもんだ」て思っていだけりゃ、また鳥がきて、前みだく(前のように)鳴くもんで、家の人たちは、その鳥の戻って行くどこ追っかけて山の中さ入って行ったけりゃ、どこがらが「しくしく」って泣く声聞えんなだど。そこさ行ってみっど、瓜姫子がはだかで縛らっちぇ泣いていたんだけど。うちの人たちはびっくりして、なんでここさ居たか聞いでみっど、天邪鬼に着物はがっちぇ、しばらっちゃ事話したど。
 そして、瓜姫子を家さ連(つ)っちぇ行って、村中さ天邪鬼のこと言ってやったけりゃ、村中の人たちが、
「とんでもねぇ、娘だ。殺してくれる」て言うて、天邪鬼んどこ縄で縛って引ずって行ったど。そして、その頃、ソバ畑が刈らっじゃばっかりだったど。天邪鬼はその畑の上を血をたらしながら引っぱらっちぇ殺さっちゃもんで、ソバの根っこは赤ぐなっているもんだど。だから並の人と違うごとすっど、天邪鬼って言われはじめだんでないべがなぁ。
話者 安部芳雄(米沢市木和田)
採集 安部富美子
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