10 花咲か爺

 むかしあるどこさ、花咲かじじいと言われる、やさしいおじいさんが住んでいだったど。枯れ木にきれいな桜の花を咲かせるという噂をきいて、あるところのお殿さまが、そこさござったんだど。
「枯れ木に桜の花を咲がせる花咲かじじいとは、お前のことか」って聞かれたもんだから、花咲かじじいは、
「はい、私が花咲かじじいと申します」と言ったんだど。そしてお殿さまから、
「どれ、その枯木さ桜の花を咲かせてみろ」と言わっだんだど。花咲かじじいは「はい」といって枯木にのぼって行って、灰をまきながらこう言ったけど。
  チチンプンプン
  コガネサラリン
  チチラポパリン
 そうしたらば、見事な桜の花が咲いだけど。そしてお殿さまはたいそう喜んでごほうびをいっぱい花咲かじいさんさ与えになったんだど。それを見っだった隣の意地悪じじいが、うらやましがって、
「お殿さま、私も枯れ木に花を咲かせることができます。あしたもここにお出になって下さい」と言ったんだど。
  チチンプンプン
  コガネサラリン
  チチラポパリン
 ほだげんども枯れ木にはさっぱり花など咲がねで、お殿さまの目さ灰が入ったんだど。そしてお供の人に意地悪じじいは捕えらっちゃんだど。ほだから欲ふかいごどじゃさんにぇもんだど。とーびんと、さんすけ眼(まなぐ)に毛がはえて、けっけっ毛抜きで抜いだれば、めんめんめっこになりました。
話者 井上ムツ子(川西町中小松)母
採集 井上礼子
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