1 猿と蛙(びっき)の寄合餅正月頃の話で、蛙と猿がいだったど。大きな家で餅搗きを始めたので、ずるがしこい猿は、臼がらみ餅をとって、蛙と二人で臼ごと山の頂上まで運んで行ったど。そして頂上さ行ったら猿が蛙さ言ったど。「この臼を下さ転がして、先に追い着いたものが、全部食べていい」 と言ったど。そうすっど蛙は、 「おれは遅いからやめっぺ」 と言ったど。けれども猿は、勝つことがわかっているので、「すっぺ、すっぺ(するべぇ)」と言って、始めたど。「そーれ」と臼を落してやったど。蛙はゆっくり降りて行ったど。そうすると山の中腹ころに木の根っこさ臼がひっかかって、餅が木の枝さひっかかっていたのを見(め)っけで、「熱(あち)い、熱(あち)い」と言いながら食ったど。先に着いてた猿は、いつまで経っても来ねな、と待ってだったど。そうしているうちに、空(から)の臼だけが落ちて来たど。猿は不思議そうに、それを見っだったど。そしたらば蛙が餅くわえて降(お)ちて来たど。それを見た猿は、 「その餅、どうしたんだ」と言ったど。蛙は、 「木さ、ひっかかってたんだ」と言ったど。そして猿は、 「おれが早く着いたんだから、餅はおれのもんだ。餅呉ろ」と言ったど。蛙は、 「嫌(や)んだ、嫌んだ」と言ったげんども、猿があんまり「呉ろ、呉ろ」て言うもんだから、蛙は猿の顔めがけて餅を投げてやったど。猿は「あつい、あつい」と言って、そんじぇ顔が赤くなったんだど。んだから仲良く分けて食わんなねぞ。 |
話者 遠藤(米沢市松ケ岬) 採集 斉藤恵子 |
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