21 狐女房

 狐が女になって化けて、ガガが死んでいないどこさ、後妻みたいに来て勤めっだもんだな。そしているうちに童寿丸という子ども出たから、童寿丸と名付けておがして(育てて)いたところぁ、ガガが、
「年取ったがらはぁ、こういうわけで、その、おれは狐だげども、こっちの家の旦那に助けらっじぇ、そして恩返しして、今まで親になってお前を産んだなだから…」
 童寿丸ざぁ、狐から生まっだ子だったんだ。そしていたところが、ガガが狐になって、
「本当は人でないから、狐なんだから…」
 て、泣いて別かっで、童寿丸ば置いて、そいつも何の書いたものとか、頭巾とか呉れて、「こいつさえもかぶっていっど、何事でもええこと皆分っから、そんでこいつかぶって、ええ人になれよ」
 というて、童寿丸さ呉っじぇ行ってしまったど。そうすっど、童寿丸ざぁ人だから、狐さ追っかけられねし…。童寿丸はうんと大したええものになったど。
(安部はつよさんが瞽女から聞いた)
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