時鳥と兄弟兄と弟いて、ほして弟が気持が荒いていうかな、兄は気持がやさしいて言うかな、エサとって来ても、弟さ、弟が「腹へった、腹へった」と言うがど思って、食べさせるわけだ。ほして兄が気持あって、食べさせるわけだ。ほして、兄が気持あって、弟さ。「こだいうまいのばり食ってるに、あたしばっかり食ねなだ」 て、兄の腹をさいてみたわけだ。ほしたら兄はあんまりええもの食っていなくて、弟さばり食わせだど。んだから、 弟悲しや、オタタカ鳥。弟悲しや、オタタカ鳥。 て、八千八声鳴くんだど。んだから口のわきから血たらして、兄をしのんで鳴くんだって。 かけすも人の真似するものな。あれは飼い慣らすと、すごく人の真似する。人と同じに鳴きますね。家に飼っておくこともありました。 山兎も飼ったことあるな。んでも山兎ていうのは、飼って六十日ぐらいしか生かしたことなかった。人に慣れないの。んでも一匹でなく二つ一緒に置けば育てられますね。というのは、二十数年も前のことだけどよ、家の前が診療所だったげんどもよ、その医者が山、川好きで、 「おっか、ワラビ、どこさ出る」 ていうわけ。んだから、「こういうどさ行ぐど出っだから、採ってこい」。こんど、「雑魚は?」ていうど、「雑魚は矢渕とか…」て教えてやるわけだ。すっど医者行って、あるとき兎捕ってきた。一週間ぐらい飼っておいた。家では豆腐、コンニャク、油揚げの卸しったけもんだから、それを貰って呉ろていうわけだ、そのお医者さんがよ。昼、箱さ入れて、夜は家の中に放すんだ。あっちこっち引っかくから、前足に奥さんのストッキングの古ものの手ざしをはめて呉で、おいたもんだ。その山兎もって来た。 「んだら、先生からだ、先生からもらって殺したりしてはいらんね」 と思ったげんどよ、一緒に他の兎と混ぜておいた。人が見てっどきは餌は食べないね。百日ぐらいは食べない。さぁこんど豆腐からと草を飼兎に入れてやってから、そおっと小屋のかげから見でっど、食うようになった。太ったもんだった。太ってから、「先生からもらった兎も一丁前にしたから、お返し、し申す」と返して来たっけな。 蛇は一番はじまり、獲物見つけっど、尻尾パタッ、パタッとして弱わらがすもんだ。その後でぐりぐり、ぐりぐり巻くの。これは何回も見た。蛇に呑まっだ兎とかねずみとか蛙とか。蛇の口あけて血出し出し呑むと、溶けて行ぐわけはぁ。ほして出してみっど、鼻っぱしなど溶けてしまっているものよ。蛇に呑み込まっだものは、蛙だろうが兎だろうが、絶対駄目だ。入ったところから溶けてしまうがらな。口の脇から、だらだら血出して呑むものな。それだら何回見たか。 |
>>お婆の手ん箱(一) 目次へ |