作内ばなしとんとむかしあったけどなぁ。むかしむかしのそのむかしだけども、大井沢ていうどこに、デヤガワていうどころあります。それでそこに、あんまり天気もええし、すっから、袋さ、あれだこれだて果物やら御飯やらいっぱい入れて、ほして雑魚釣りに行ったけどなぁ。ほうして、ぐいぐい、ぐいぐい行ったら、デヤガワていうどこさ行ったら、雑魚ていうげんど、これイワナなんです。雑魚いっぱいいで、釣ったんだって。して釣って、こんど釣ってるうちに、ついつい、あんまり掛かるもんで、暗くなったんだってはぁ。 向うにシシ小屋あるんだってな。あの熊狩(と)りに行くときのシシ小屋な。ほしてそこさ泊って、こんど夜、火どんどん、どんどんとシシ小屋さ焚いで、そして魚を、こんど腹悪れぐなるから、腹わた取って串さ刺して焼いていたど。ほしたら、真夜中になったらよ、火どんどん焚いでいだげども、 「おらはぁ、そうたら、行ぎ申さねちゃなぁ」 ていうんだど。ほしたら、 「そうたほどに、来るなというたの」 また、「おらはぁ、そうたら、行ぎ申さねちゃなぁ」ていうど、「そうたほどに来るなというたの」。 ほしてこんど、作内いたどこさ、「作内、雑魚食(か)せろ」て入って来たんだど。ほして作内、たまげて入って来たの見たれば、一つ目(まなぐ)のどうでん坊て、むかし言うた、そういう風な化けものだったど。ほれがら作内がね、 「入って、食(まく)らえ」 ていったど。ほうしたれば、のたりのたり、のたりと入って来て、片っ端から取って、ばぐばぐ、取ってはばぐり、取ってはばぐりて、みな食べだんだてや、雑魚。ほれから、 「ほんじゃ、おれも食われるんでないかなぁ」 と思って、そおっと、そのどんどん燃えっだどこさ、野差し(小刀)焼いだんだてよ。ほうして、どどのつまりね、腹皮、「ひっくるまぁ、ひっくるまぁ」て、伸ばしたんだって。んだから、そこの真赤に焼けた野差しを、「まいったべな」て、腹の皮さ上げたれば、「あつい、あつい、あつい、あつい」て、〈ひっくるまぁ〉て、したなさ、からんで、 「作内、かんにんだ、かんにんだ」 て逃げて行ったんだど。ほして、夜早く明けたればええなぁと思って作内が待っていだんだど。ほしてこんど夜明けたから、白々と明けたから見たら、血、ボダボタ、ボダボタとたらして行ったもんだから、行ってみたれば、木の根っこさ頭突っこんで、ウェンウェン、ウェンウェンていだっけて。ほれからそろそろ棒持って来て、「こん畜生、こん畜生」て叩いてみたれば、狸の化物だけって。ほれからこんど、魚の代りに袋さ入ってきて、ほうしてこんど家さ持ってきて、 「とうちゃん、魚盗らっじゃが」 と言わっで、 「魚どこでない。まだまだええもの獲って来たから、みんな来てみろ」 て、子ども大勢いるもんだから、したれば見たれば見たことも聞いたことない奴だって。それを皮剥いで、そっつの家さも少し、おすそ分け、こっつの家さも、少しおすそ分け、みんなさやったれば、すごく喜ばっでよ、 「ああ、お前ださ、こだなうまい肉もらったんだもの、こいつ駄賃だ」 とて、みんなからもらって、みんなで喜んで御馳走なって、喜んだけど。ていうはなし。どーびんさいすけ、さいざぶろう、さいざの目(まなぐ)さ火がはねて、けんけん毛抜きで抜いだれば、まんまんまっかになり申して、めんめんめっこになり申した。 「どーびんさいすけ、さいざぶろう、さいざの目さ火がはねて、けんけん毛抜きで抜いだれば、まんまんまっかになり申して、めんめんめっこになり申した」て、指で顔をなぞって、顔遊びしたもんだ。そうして聞かせっど、孫たち、「もう一つ聞かせろ」て言うもんだった(笑)。 |
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