10 鴨どんじょ話むがしあったけど。むがしなぁ、塩根 (しよね) 川の中小屋 (なかごや) さ、とでも鉄砲ぶぢの好 (すぎ) だ爺 (ず) さまいだけど。ほの 爺さまぁ、暇せぁもあっど鉄砲たがて出がげでぁ、雉打 (ぶ) てきたり、狢 (むずな) だどが、兎 だどがて、さまざまの獣捕てくっがったど。 ある時 (づぎ) 、川さ鴨ぁ下りだけど。ほうすっど爺さまぁ田の仕事 (すごど) ぶんなげで、家 (え) さ 走して行 (え) たど。ほうして、家がら鉄砲持て来て、一羽見んなさめがげで、ぼえん と打 (ぶ) たど。ほれ打たていうど、田の中さ鉄砲ぶなげで、川さ走して行てみだど。 ほうしたば、一羽ばりんねぁ、五、六羽もぶだっでだけど。ほんで爺さまぁ、ほ こほこて喜で、ほれ縄で首 (くぴと) つねぁで、担 (かづ) で鉄砲持ぢん来たど。 ほしたば、田の泥水ん中さ鉄砲ぁ漬 (つ) かていだけど。 「あらあらっ。これぁ大事 (おおごと) したちゃは」 ど思 (も) て、ほの鉄砲拾ろたど。ほんで爺さまぁ、どでして拾ろて見だど。ほした ば、鉄砲ん中さ、どんじょぁ五、六升もあるくれぁ入 (へあ) ったけど。ほんで爺さまぁ 喜で、 「これぁええもんだ。鴨一羽打たばんで、鴨ぁ五、六羽も捕っで、ほの外んどん じょぁ五、六升もかがて、こんげぁぇええごどあねぁおんだ」 て、ほこほこて喜では、田の中 (うづ) 走てありぐけど。とんぴん からんこぁ ねぁっ けどは。 |
(話者 高橋久米次郎) |
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