6 こぶとり爺さまむがしあったけど。あるどさなぁ、頬 (ほたぼ) さこぶぁでっだ爺さまいだけど。ほの爺さまぁ、頬さこぶぁ 下がているおんだはげぁぇ、何するたて邪魔で邪魔でしょねぁがったど。 ほんでなんとがほのこぶ取れるように、ていうなで、裏山にある地 (ず) 蔵さんさ、 三七ぁ二十一日の願かげで、毎晩お参 (めあえ) りしったけど。 ほうして、二十一日目の晩、爺さまぁ、又裏山の地蔵さんさ登て行たど。ほう したば、なんだが地蔵さんどごぁ、にぎやぁがだけど。ほんで、爺さまぁ、こん げぁぇ暗ぐなてがら何なおんだべ。ど思 (も) て行て見たど。 ほしたば、鬼こぁ達 (だ) ぁ、地蔵さんの前 (めあえ) で、火焚 (てあえ) で、ほごの広場で踊ったぁだ けど。 ほうえほえほうえほえ あっつの山がらこっつの山がら 集 (あづ) ばれ集ばれみな集ばれや こっつ山でぁ竹の子伸びろ あっつ山でぁわらびこぁ伸びろ 伸びだ伸びだ竹の子ぁ伸びだ 伸びだ伸びだわらびこぁ伸びだ あんまり伸びで天まで届 (と) づだ てえんてえんてんてんてんのほぅほほ てえんてえんてんてんてんのほぅほほ て、ほれごそ面白そん踊ったけど。あんまり面白おんだはげぁぇ、爺さまも、 手振り足踏みしていだど。ほのうづん調子さのては、自分 (おわ) も知らねぁうづん、鬼 こぁだど一緒んなて踊ったけどは。 てえんてえんてんてんてんのほぅほほ てえんてえんてんてんてんのほぅほほ ては、爺さまぁ、鬼こぁだつぁ混 (まざ) て、夢中んなて踊たけど。 「そんま夜ぁ明げっさげぁぇ、あどぁ明日又集ばて踊んべ」 ていうけど。ほうして、爺さまどさ、 「爺さま爺さま。あんまり踊り上手 (じょ) んだ。明日も晩に来えちゃ。おかげで面白がっ た」 ていうけど。ほしたば、別の鬼こぁ、 「この爺さま、明日来ねぁどえぐねぁはげぁぇ、爺さまの大事だこぶ取ておくべ や」ていうけど。ほしたば、他の鬼こぁだも、 「ほれぁえ。ほれぁえ」 ていうけど。ほうして、爺さまこぶ取て、持て行てしまたけどは。 爺さま喜で、頬撫でだば、つるつるて頭軽ぐなたけど。ほうして、家 (え) さ行 (え) て、 「婆さま婆さま。まず見ろちゃ。鬼こぁだに、頬のこぶ取てもらてきた」 て言 (ゆ) たば、婆さまぁ、 「あらあらっ。爺さまぁ頬ぁきれんなたでぁ。えがったえがった」 て、二人 (したり) して喜で、これも願かげで、神仏さ願たご利益なんだていうなで、神 棚さお神酒上げで、お礼参りしたけど。 ほうしたば、ほごさ隣のへちゃへちゃ婆んば来たけど。ほうして、 「お前家でぁ、神棚さお神酒やお灯明上げで、何ほんげぁぇ祈ったおんだや」 て聞ぐけど。ほんで爺さまぁ、 「夕べ (ゆべな) 暗ぐなてがら、こぶ取てころて願かげっだ地蔵さんさ、お参り行たなよ。 ほしたば、鬼こぁだえっぺぁ集ばてで、踊り踊ったけなよ。ほんで面白ぐなて、 鬼こぁだどさ混 (まざ) て踊たば、帰 (けあえ) りしめん、、鬼こぁだ、俺ぁ、あまり踊り上手 (じょん) だど て、明日の晩も来て踊れて言 (ゆ) わっだなよ。ほして、明日来ねぁえどえぐねぁは げぁぇ、爺ぁ大事だこぶ、明日まで預がておげどて、俺ぁこぶ取てくっだぁはげ。 んだはげ有難でぁくて、拝んだぁだ」 て教へだど。ほしたば、隣のへちゃへちゃ婆んば、 「んでぁ、俺ぁ家の爺ぁどごもやらねぁんねぁ」 ていうど、どんどど自分家さ走して行たけど。ほうして、 「爺い爺い。隣りの爺さまぁ、裏の地蔵さんさ行て、鬼こぁだど踊て、こぶ取て もらて来たっけぜぁ。お前も行て取てもらてこえちゃ」 て言 (ゆ) たど。爺もこぶぁ出でで、邪魔だおんだはげぁぇ、ほの晩暗ぐなっど、裏 の地蔵さんさ行たど。 ほうしたば、やっぱり地蔵さんの前の広場で、鬼こぁだ火焚 (てあ) えで、 ほうえほえほうえほえ あっつの山がらこっつの山がら 集ばれ集ばれみな集ばれや こっつ山でぁ竹の子伸びろ あっつ山でぁわらびこぁ伸びろ 伸びだ伸びだ竹の子ぁ伸びだ 伸びだ伸びだわらびこぁ伸びだ あんまり伸びで天まで届 (と) づだ てえんてえんてんてんてんのほぅほほ てえんてえんてんてんてんのほぅほほ て踊ったけど。爺ぁ踊んねぁんだし、そばさ坐 (ねま) て、手ばり動 (えご) がしったけど。 ほしたば、鬼こぁだ、爺も踊れどて手引張たけど。ほんで爺ぁ仕方ね立て踊た ど。んだて下手だおんで下手だおんで、見でらんねぁけど。ほうすっど鬼こぁだ。 ほれて見て、 「夕べ (ゆべな) の爺ぁこんげぁぇ下手んねぁがった。ほれさこぶもある。ろぐだ踊りも踊 んねぁで、なにしん来た」 つけど。ほんで爺ぁ、 「夕べ隣りの爺さまぁ、こぶ取てもらたて喜で来たはげぁぇ、俺も取てもらいでぁ くて来たぁだ」 て言 (ゆ) たずおん。ほしたば、鬼こぁだ、 「なえだど。こぶぁ大事だおんだど思 (も) たら、いらねぁおのであったなが、んでぁ、 ろぐでもねぁ踊り踊て、折角 (へっかぐ) のお祭りぶぢごわしてしまたはげぁぇ、お前どさこ のこぶくつげでやる」 ていうど、こぶのつでねぁ方の頬 (ほたぼ) さ、ほのこぶびだっとくっつげらっでしまた けどは。 ほんで爺ぁ、両方の頬さこぶぶら下げで、泣ぎながら家さ行たけどは。んだは げぁぇ、人の真似 (まねあ) なのしたて駄目だおんだど。とんぴん からんこぁ ねぁっけ どは。 |
(話者 高橋良雄) |
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