3 花咲が爺じいむがしあったけど。あるどさ、爺さまど婆さまいだけど。爺さま魚捕り好ぎで、川さ釣ん行たりすっ がったど。 ある時 (づぎ) 、爺さまぁ、隣りの爺いど共同で簗 (やな) かげで、毎朝ま、二人ぁやな見ん、 川さ出がげっがったど。隣りの爺ぁ、欲張りで、時々自分 (おわ) ばり、暗 (くれ) ぁうづん行て、 雑魚捕てくんなだけど。 ほの朝まも、隣りの爺ぁ、こ早 (ばえ) ぐ行てみだど。ほしたば、雑魚ど混 (まざ) て、犬こぁ かがったけど。欲張り爺ぁ、雑魚ばり捕て、犬こかまわねで、置えで来たぁだど。 明りぐなてがら、爺さま、やなさ行たば、雑魚ぁなんにもかがてねぁで、めん ごえ犬こばりかがったぁだけど。ほんで爺さま、 「今日ぁ、犬こばんで、雑魚ぁかがてねぁども、めんごえ犬こで、ぶんなげでや んな、むぞせぁはげぁぇ、家さ連でえて、婆さまど二人して育でんべ。子供もい ねぁし、わらすこ代りんすんべ。婆さまも喜ぶべ」 て、独り言ゆいながら、ほの犬こ懐 (しとごろ) さ入 (へ) で、家さ連で行たど。 ほうして、婆さまどさ、 「婆さま婆さま、まず見ろ。やなさ雑魚ぁさっぱりかがてねがったども、こげぁぇ ためんごえ犬こぁ掛ったはげぁぇ、わらすこ代りん育でだらえんねべがど思 (も) て、 拾ろてきた」 て言 (ゆ) たば、婆さまも、 「あらあら。めんごえ犬こだごど。拾ろてきてくっでえがったな、爺さま」 て、うんと喜で、犬この頭撫でで、家 (え) ん中さ入 (へ) で行て、飯 (まま) さ赤 (あげ) ぁぇ魚 (とど) こ混じぇ で食へだけど。ほしたら犬こぁんめぁそんして、ほの飯ぺろっと食たけど。ほん で爺さまど婆さま、めんごがてめんごがて、自分わらすこみでぁん大事んして育 でっだけど。ほうして、ほの犬こぁ、白えおんだはげぁぇ、、名前 (なめあえ) 白どつけだけど。 白ぁ、爺さまど婆さまに、大事んされるおんだはげぁぇ、爺さま山さ行げば山 さ、畑さ行げば畑さ、婆さま川さ行けば川さ、爺さまど婆さま行ぐどごだば、ど ごさでもつでありぐなだけど。 ほうしているうづん、白も大分 (であぶ) 大っきぐなてきたけど。ほうしてなー、ある時 (づぎ) 、 白ぁ、ないだおんだんだが、家の前 (めあ) で、わんわんて吠っけど。ほんで婆さま、 「爺さま爺さま。ないなおんだべ白ぁ、めっぽうわんわんて吠えるおんだ。なん だが唯事んねぁよだ。早ぐ出はて見でくんねぁが」 つけど。ほんで爺さま、出はて見だど。ほしたば白ぁ爺さまどご見で、わんわ んて吠えながら、爺さまそばさ走して来て、爺さま、はがま(もんぺ)くわぇで 引っ張っけど。ほんで爺さま、 「なえだや白。ほんげぁぇ俺ぁどご引っ張て、俺ぁどご行ごていうなが。よしよ し。どごさ行ごていうなや」 て言 (ゆ) いながら、白ぁ引っ張て行ぐ方さ行てみだど。ほしたば、白ぁ家 (え) の前 (めあえ) の松 ぬ木んどさ引張て行たけど。ほして、吠えながら、前足で松ぬ木の根っこどご掘 てぁ、後 (うすろ) 足で土けっとばして、爺さまどさ来て、はがま引っ張り引張りすんなだ けど。 ほんで爺さまぁ、 「なんだや白。ほご掘れていうなが。よしよし、今、家がら鍬 (か) 持て来て掘っさげぁぇ、 待で待で」 て、爺さま家さ走して行て、鍬持て来て、白ぁ掘た松ぬ木の根っこんどご掘て みだど。ほうして、大分掘たば、かちってなんだが固 (かで) ぁぇ物さ鍬あだたはげぁぇ なんだべど思 (も) て、又掘てみだば、瓶こみでぁだずおん。爺さますっかり掘てみだ ば、やっぱり瓶こだけど。 ほの瓶こ引っ張り上げるかんじょしたば、なんと重でぁおんで、爺さま漸ぐ引っ 張り上げだど。ほんでほの瓶こ家さ持て行て、 「婆さま婆さま。まず来てみろ。白ぁわんわんて俺ぁどご引張て行て、掘れ掘れ ていうはげぁぇ、松ぬ木の根っこんどご掘てみだば、こういうおのぁ出はてきた け。なになおんだが開げてみんべや」 て、二人して開げでみだど。 ほうしたば、ほの瓶こん中さ、金ぁえっぺぁ詰まていだぁだけど。爺さまど婆 さま、どでして、どでして、 「あらあら、まずまずたまげだ。金ぁ出はてきたちゃ」 て、眼 (まなぐ) 丸こぐしてたまげっだけど。ほうして、二人ぁ瓶がら、ほの金開げでみっ だど。 ほうしたば、ほごさ隣りのへちゃへちゃ婆んば来たけど。ほうしてほの金の山 みっど、たまげで、 「なえだやは。まずまずこんげぁぇえっぺぁ金、どから持て来たおんだや。まず まずたまげだおんだ」 て、たまげで眼丸こぐしったけど。ほんで爺さまぁ、 「表で白ぁ、わんわんて吠えで、松ぬ木の根っこんどご掘れていうおんだはげぁぇ、 ほご掘てみだべ。ほしたば、この瓶こぁ出はてきて、開げでみだば、こんげぁぇ えっぺぁ金ぁ入 (へあ) ったはげぁぇ、たまげで見っだどごだ」 て教 (お) へだど。ほしたば、隣りのへちゃへちゃ婆んばぁ、 「んでぁ、俺ぁ家の爺ぁどさも教へねぁんねぁ」 ていうど、どんどど自分家さ走してえたけど。 へちゃへちゃ婆んば、自分家さ行ぐど、 「爺い爺い。隣りの家でぁ、白に教へらっだどご掘て、金えっぺぁ持て来たけぁ、 お前 (めあえ) も行て、白ぁどご借りできて、掘てみろちゃ」 て言 (ゆ) たば、隣りの欲張り爺んじぁ、 「んでぁ、俺も白ぁどご借りできて、掘てみねぁんねぁ」 ていうど、隣りさ走して行ぐど。 「白ぁ、どご貸へちゃ。俺も掘てみっさげぁぇ」 ていうど、貸すても言 (ゆ) わねうづん、白ぁ首 (くぴと) さ縄つけで、白ぁ嫌 (や) だ嫌だていうな、 むりむりと引張て行たど。 ほして、白ぁどご、ほごらこごら引張て歩 (あり) て、ここがここがて言 (ゆ) たたて、白ぁ さっぱりこごだて吠えねぁべ。ほうすっど、欲張り爺ぁごしぇで、 「この畜生ぁ。なして教へねぁ」 ていうど、縄ぐえぐえと引張たべ。ほうすっど、白ぁ首 (くぴと) あ痛でぁおんだおん。 きゃんきゃんてねぁだべ。ほうすっど爺いたがりぁ、 「白こごがっ」 ていうど、ほごんどご、じゃぎじゃぎと掘たど。ほしたば、がじゃがじゃど、瀬戸 (へど) かげなのばり出はて、金なのさっぱり出はて来ねけど。 ほうすっど、欲張り爺んじぁごしぇで、 「この畜生ぁ、俺ぁどさこんたおのばり出しあがて、ろぐでなし畜生ぁ」 ていうど、白ぁどご、鍬 (か) でぴぱだぎづげで、殺してしまたけどは。 爺さま、隣りの爺んじぁ、なんぼしたて白ぁどご返 (けあ) さねぁおんだはげぁぇ、隣 さ行て、 「お前家 (めあええ) でぁ、なんぼしたて白ぁどご返さねぁはげぁぇ、もらいん来た」 て行たど。ほうしたば、隣りの爺んじぁ、 「あんた畜生ぁあったおんでねぁ。俺ぁどさばろぐだおの出しあがねぁで、ごしゃ げっさげぁぇ、ぶっ殺して、ぶなげてやた。ほごらあだり薮でも見んだ」 つけど。爺さまどでしてさがしたば、薮やらさ白ぁ死でだけどは。 ほんで爺さまぁ、むぞせぁくて、むぞせぁくて泣ぎながら、白ぁどご抱 (であ) で行て、 松ぬ木の根っこさ埋で、婆さまど二人ぁ、泣ぎながら拝んでだけどは。 ほうしていたば、白ぁどご埋めだどごの松ぬ木ぁ、おがておがて、二、三年で は、大木んなたけど。ほしたば、隣りの欲張り爺んじぁ、ほの松ぬ木ぁ、自分家 の畑さ邪魔んなっどて、断りもしねぁで、ほの松伐てしまたけどは。 爺さま、白ぁお陰げで、折角 (へっかぐ) 大木んなて、白ぁ魂 (たまへ) あこもた松ぬ木だていだおん だはげぁぇ、本当んいだましがて、がっかりしていだけどは。 んでも、伐らっでしまたんだし、なんずも仕方ねぁ、ほれで臼掘たど。ほして、 ほの臼で米搗ぎしたど。ほうして二、三度搗だば、なんだが、ちゃりんという音ぁ すっけど。爺さまおがしど思 (も) て見だば、大判がら小判出はてきたぁだけど。又搗 たば、又出はてきて臼さえっぺぁなたけどは。爺さまたまげで、 「婆さま婆さま。まずまず、早ぐ来て見ろちゃ。早ぐ早ぐ」 て叫がだど。ほんで婆さま、何事ぁおぎだおんだべど思て、あたふためで、出 はて来たけど。爺さまぁ、 「まずまず、この臼ん中見ろ」 て叫がぶおんだはげぁぇ、婆さま走して来て、臼ん中見だど。ほして、 「あらあらっ、なえだやは。又こんげ金ぁ出はたながは。まずまず、たまげだ、 たまげだ」 て、又眼丸こぐしてどでしったけどは。 爺さまど婆さまぁ、あんまり叫がぶおんだはげぁぇ、前の畑にいだ隣りの欲張 り爺んじぁ、ないだべど思て、走して行て見だど。ほしたば、ほれ、臼ん中金で えっぺだべ。ただたまげでいだけど。ほして、 「なして、こんげぁぇ金ぁ出はたおんだや」 て聞ぐけど。ほんで爺さまぁ、 「この臼で米搗ぎしったば、出はてきたぁはげ」 て教へだべ。ほうすっど、隣りの欲張り爺んじぁ、 「んだら、俺ぁどさも、ほの臼貸してみろ」 どて、ほの臼貸さんねぁていうなもかまわねぁで、むりむりど自分家さ背負て 行てしまたけどは。 ほうして、庭さ下ろすど直ぐは、米搗ぎ始めだけど。ほうして、ほら金ぁ出は てくんぞど思 (も) て搗えだら、なんだがざぐらざぐらっていう音ぁすっさげぁぇ、ほ らっ金ぁ出はたど思て見だば、木の切端 (こっぱ) どが、瀬戸 (へど) かげなのばり、がらがらど出 はてきて、金なのさっぱり出はらねぁけど。んだおんだんだはげぁぇ、欲張り爺 んじぁごしぇで、 「まだこんたおのばり出しあがて、こんた臼ぁ、あったおんでねぁ」 ていうど、まさがり持てきて、ほの臼ばえんばえんど割てしまて、かまどさく べで、焼えでしまたけどは。 爺さまぁ、隣りでぁ、臼持てえたきりで、戻すじゃねぁ。ないなおんだべど思 て、もらいん行たど。ほしたば、隣りの欲張り爺んじぁ、 「あんた臼ぁ、あったおんでねぁ。米搗えだら、金どごんねぁ、瀬戸かげなのば り、がらがらど出しやがて、あんまりごしゃげっさげぁぇ、あんおの、割て焼や してしまたは」 つけど。ほんで爺さまぁ、 「んだはげぁぇ貸さんねぁ、て言 (ゆ) たあだでぁ。焚えでしまたあだば仕方ねぁ。白ぁ 形 (かだ) 身 み だおん。灰 (あく) ばりももらてえぐ」 て、ほの灰もらて来たど。 ほうして、ほの灰、白ぁどご埋 (んめ) っだあだりさ、ざえっと撒 (めあえ) だど。ほうしたば、 ほの灰ぁ風 (かじえ) で飛ばさっで、ほごらあだりの枯木さかがたけど。ほしたば、灰のか がた枯木さみな花咲えだけどや。ちょうどほごさ、殿さま、馬さのて通りががて、 ほれみで、どでして、 「爺い爺い。あんまり珍らす。もうえっぺん咲がへでみろ」 つけど。ほんで爺さま。 「んですか。んでぁもう一回 (えっぺん) してみぁすべちゃ」ていうど、 「この枯木さ、みな花咲げー」 て、残た灰、ほごらあだりの枯木さ、ざえっと撒えだど。ほしたば、ほごらあ だりの枯木ぁみな花咲えだど。 殿さま、喜で、喜で、 「これは見事、見事」 て、扇振 (ふ) てだけど。ほうして、爺さまどさ、えっぺぁごほうびくっだけど。 ほの話聞だ隣りの欲 (よご) 張り爺んじぁ、んでぁ、俺も花咲がへで、殿さまがらごほ うび貰わねぁんねぁていうど、残た灰、ざえざえとさらて、殿さま来んな待ぢっ だど。 ほれがら、何日 (えっか) がしてがら、又、殿さま馬さのて来たけど。ほうすっど欲張り 爺んじぁ、枯木さ上がて、 「花咲が爺んじぁ、枯木さ花咲がへで見 (め) へあす」 て、大っき声で叫がだど。ほうしたば殿さま、 「そうが。そんなら咲がへで見へろ」 ていうおんだはげぁぇ、欲張り爺んじぁ、喜で、 「この枯木さ、ありったげ花咲げっ」 て言 (ゆ) いながら、ざえざえど灰、すこでぁま撒えだど。 ほうしたば花なのさっぱり咲がねぁで、ほの灰ぁ、殿さまや家来達 (だづ) の眼 (まなぐ) さなの ばり入 (へあ) てしまたけどは。んだおんだんだはげぁぇ、殿さまごしぇで、 「この嘘 (ずほ) こき爺んじぁ、花も咲がへれねぁで、ろぐだごどしねぁ。ふんずばりづ けで、牢さぶづ込 (ご) でしまえ」 て、ただ、しこでぁまひぱだがっで、あげぐのはでにぁ、牢さぶづ込まっでし またけどは。 んだはげぁぇ、欲張て、人真似したて駄目だおんだど。とんぴん からんこぁ ねぁっけどは。 |
(話者 舟生カネヨ) |
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