15 桃太郎むがしあったけど。むがしなー。あるどさ爺ど婆んばいだけど。爺ぁ畑の胡瓜さ手くんねぁんねぁ、 ていうなで、山さ柴刈りん行たど。婆んばぁ今日ぁええ天気だはげぁぇ、洗濯 (へんたぐ) で もすんべていうなで、川さ洗濯行 (え) たど。 ほうしてなー。婆んば川で洗濯しったら、塩根川の方がら、どんぶりこ、どん ぶりこどなー、大っき桃ぁ流ってきたけど。婆んばぁ、なえだて大っき桃だごど て、びっくりしたけど。ほうして、ほの桃拾ろてみだば、大っきおんで、大っき おんで、ほうして、とでもんめぁぇそだけど。んだはげぁぇ、これだばなんぼが んめぁぇんだが、爺いと二人して食 (か) ねぁんねぁていうなで、家さ持てえて爺ぁ来 んな待じっだど。 ほのうづ爺ぁ手柴でっちら背負て、家さ来たけど。ほんで婆んば、 「爺さま、爺さま。まず来てみでくっちゃ。下の川さ洗濯行たば、塩根川の方が ら、こんげぁぇ大っき桃ぁ流っできたけじゅ。ほれまずみろ」 て、ほの桃見 (め) へだべ。ほしたば爺いもどでして、 「なんだて、随分 (ぜーぶん) 大っき桃だごど。こんげぁぇ大っきなまだ見だごどねぁな」 て、たまげっだけど。 ほうして、婆んば爺いど二人して、ほの桃食うべど思 (も) て、まな板 (まねあいだ) さ上げで、包 (ほえ) 丁 で切 (はやす) べど思たら、ほの桃ぁしとりで真中がら、ざくっと割っだけど。ほうして、 中がら、 「おほげぁぇ。おほげぁぇ」 て、赤子 (あがご) おぼこぁ出はてきたけど。爺いど婆んばありったげどでしてしまたけ どは。んでもあんまりめんごえはげぁぇ、二人して育でるごどんしたど。ほうし て、桃がら生っだはげぁぇ、桃太郎どつけんべて、桃太郎どつけで、大事 (であじ) んして 塩引 (あげあえとどこ) なの食へで育でだけど。 桃太郎ぁ赤 (あげ) え魚 (とど) こでまま食て、ほのうづん大っきぐなたけど。ほうしたば、あ る時 (づぎ) 桃太郎ぁ、爺いど婆さまどさ、 「爺さま婆さま、にぎり飯 (まま) にきてくんねが」 ていうけど。ほんで爺ぁ、 「なえだや桃太郎、にぎり飯なの持 (たが) てどさ行ぐどご」 て聞だら、 「鬼が島さ鬼征伐行ぐなだ」 つけど。ほんで爺いど婆んば、どでしてしまたけどは。んでも、桃太郎ぁ行ぐ ていうなだば、行がへねぁんねぁべていうなで、きみ団子えっぺぁこしぇぁでくっ だど。 ほんで、桃太郎ぁ、ほれ腰下げで、鉢巻して、刀差して出がげだど。ほうして 野越え山越え行たば、わんわんて犬こぁ出はてきたけど。ほうして、 「桃太郎さん桃太郎さん。どこさ行ぎぁすや」 て聞ぐけど。ほんで桃太郎ぁ、 「鬼が島さ鬼征伐行ぐなだ」 て言 (ゆ) たば、犬こぁ、 「腰さ下げっだおのぁ何ですや」 ていうけど。ほんで桃太郎ぁ、 「日本一のきみ団子だ」 て教へだど。ほしたば犬こぁ、 「んだら一つけろや。俺も鬼が島さ鬼征伐ん行くはげぁぇ」 ていうけど。ほんで桃太郎ぁ、 「んであ一つくえっさげぁぇ、俺ぁどさつで来え」 てゆたど。 ほんで桃太郎ぁ、犬こぁどさ一つくっで連 (つ) でえたど。ほうして、ずうっと行た ば、今度ぁ、きゃっきゃって猿こぁ出はて来たけど。ほうして、 「桃太郎さん桃太郎さん、どごさ行ぐどごですや」 ていうけど。ほんで桃太郎ぁ、 「鬼が島さ鬼征伐行ぐなだ」 て言 (ゆ) たべ。ほしたば猿こぁ、 「腰さ下げっだおのぁ、何ですや」 ていうはげぁぇ、 「日本一のきみ団子だ」 て言たば、猿こぁ、 「んだら、一 (しとつ) つけろや。俺も鬼征伐えぐはげぁぇ」 ていうけど。ほんで猿こぁどさも一つけっで、犬こど猿こぁどご連で、まだず うっと行たど。 ほしたば、今度ぁ、けんけんけんて出はてきたおのぁいだけど。ほれぁ雉だけ どや。ほして、雉も、 「桃太郎さん、桃太郎さん。どごさ行ぐぁですや」 て聞ぐけど。桃太郎ぁ、 「鬼が島さ鬼征伐だ」て言 (ゆ) たど。ほしたら雉ぁ、 「腰さ下げっだな、何ですや」ていうけど。ほんで桃太郎ぁ、 「日本一のきみ団子だ」て言たば、雉ぁ、 「俺ぁどさも一つくんねぁが、鬼征伐、俺も行ぐはげぁぇ」 ていうけど。ほんで桃太郎ぁ、雉ぁどさも一つくっで、犬こど猿こど雉ぁどご連 (つ) で行たじゅおん。 ほうして、野っ越え、山越えずうっと行たば、鬼が島見 (め) っけど。お城あって、 門がつでで、ほの門どさ青鬼なの、赤鬼なのいで、金棒持ていだけどや。ほうし て、門びっつりくえで、お城の中さ入 (へあ) らんねぁなだけど。ほんで桃太郎ぁ雉ぁど さ、 「お前飛で行 (え) て、門番の鬼こぁだどごやっつけで、門開げろ」 て言 (ゆ) たど。ほうすっど雉ぁ、ばだばだど飛で行て、門の上 (ゆえ) 飛び越えで、門守っ てだ青鬼こだの、赤鬼こだあの頭やら眼 (まなぐ) なの、くぢぱでじょぎじょぎどつついだ ど、ほんで鬼こぁだ、痛でぁがて、 「痛でぁ痛でぁ」 て、皆逃げだけどは。ほんで雉ぁ中がら門あげだど。 ほんで桃太郎ぁ、犬こど猿こぁどご連 (つ) で鬼こぁだえっぺぁだお城の中さ入 (へ) あて 行たずおん。ほうして、鬼こぁだどご攻めだど。 犬こわんわんと吠えで、鬼こぁだの足かったり、股かつたりすんべ。猿こぁ鬼 こぁだの顔 (つら) ひっかぐんだが、頭の毛むするんだが、ひどえおんだけど。ほうして 雉ぁ鬼こぁだの頭つづぐんだが、眼つづぐんだがで、鬼こぁだ、皆、 「痛でぁ痛でぁ」て泣ぎながら逃げてありぐけど。 桃太郎ぁ刀抜えで、鬼の大将ど戦 (ただ) がたど。んだて桃太郎ぁ荒れぁおんだべ、な んぼしたて桃太郎にかなわねぁけどや。 ほんで鬼の大将ぁ、桃太郎ぁどさ、 「降参です、降参です」 て、手つえであやまたけど。ほうして、お城の宝物 (おの) みな出してきて、桃太郎ぁ どさ呉 (く) っだけどは。 ほんで桃太郎ぁ、ほの宝物みな車さ積まへで、雉ど犬こに引がへで、猿こに後 押しさへで、家さ帰て来たど。とんぴんからんこあねぁっけどは。 |
(話者 高橋良雄) |
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